注目すべきは、米中の対立の再燃だという。
「コロナが沈静化すれば、米国は中国との貿易交渉を再開するでしょう。バイデン大統領は、トランプ前大統領のような過激なやり方はしないでしょうが、政権が代わっても、米中の覇権争いの構図自体は、なんら変わりません。
今は、米国と中国の景気回復が世界の株式市場を牽引しています。両国の対立が深まれば、当然、経済面ではマイナスの要素が浮上してきます。株式市場も、“イケイケどんどん” の状態ではなくなるのです。
米国内の景気が回復するのにともない、物価や金利も急上昇する可能性があります。そのときが危ない。金利が上昇すると国債の利回りが高くなるので、リスクを取って株を持っている必要はなくなる。投資家は株を売り、国債に乗り換えだすんです。
金利の急騰、米中対立の深刻化は、いつ始まってもおかしくない。早ければ5月ごろにも起こり得ます。2021年中には、緩やかに2万5000円台まで日経平均が下がると予測しています」(井出氏)
経済評論家の加谷珪一氏は、現在の株価上昇には「ポスト・コロナ社会」への期待値も反映されているという。
「リモートで仕事をしたり、自動運転のシステムが普及したり、いわば『高度IT社会』がコロナをきっかけにやってくるだろうという期待です。実際、IT関連銘柄が買われる傾向にあり、それが日経平均を引き上げています。しかし、コロナで経済が悪い状況のなかで、株価だけが異常に高くなっていることも事実です。
『ポスト・コロナ社会』への期待が夢物語に終われば、株価上昇が始まった2020年10月ごろの水準に戻ってしまうかもしれません。当時の日経平均は2万3000円台でした。4月ぐらいに、株価の上昇局面で調整があってもおかしくないと思います」
経済評論家の山崎元氏は、日本の株価に影響を与える米国市場が、バブル化していると問題視する。
「社債を発行して自社株を買い増し、株価が上がればストックオプションなどの形で持っている経営者が儲かるという展開が増えていて、米国市場はすでにバブル的な株価形成になっています。ですが、たとえば社債がパンクする可能性もあるわけです。
社債がパンクして資金を調達しにくくなると、米国株が1~2割急落することが十分起こり得ます。失業率が下がって、FRB(米連邦準備制度理事会)が現在の量的金融緩和政策を転換して、金利が引き上げられたら、日経平均株価は大きく下がる。私は2021年暮れから、2022年前半にはあり得るシナリオだと考えています」
素人がカモにされる世界。株を買うなら、専門家たちが鳴らす警鐘に、耳を傾けてほしい――。
写真・朝日新聞
(週刊FLASH 2021年3月9日号)