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ホテル、製紙、建設…500社を設立した渋沢栄一のビジネス4カ条

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.02.28 16:00 最終更新日:2021.02.28 16:00

ホテル、製紙、建設…500社を設立した渋沢栄一のビジネス4カ条

 

 渋沢栄一は29歳で新政府に仕え、さまざまな制度改革や制度作りに携わり、32歳のときには大蔵少輔事務取扱という「大臣の一歩手前」という役職にまで出世しています。30代前半の若者が「新しい国の形」を作っていったのです。

 

 33歳でこれまで勤めていた大蔵省をあっさり辞め、第一国立銀行(現・みずほ銀行)の総監という役職につきます。

 

 

 役人から、民間の実業人になったのです。農民から武士になったときが1度目のキャリアチェンジだとすれば、ここで渋沢は2度目のキャリアチェンジを果たします。

 

 実業界に身を転じた渋沢は、その後約20年にわたって、さまざまな企業や組織の立ち上げ、運営、経営に携わっていきます。その数はなんと500にも上ります。

 

 第一国立銀行を始め、日本鉄道会社(現・JR東日本)、東京海上保険会社(現・東京海上日動火災保険)、東京会議所瓦斯掛(現・東京ガス)、東京株式取引所(現・東京証券取引所)、ジャパン・ブリュワリー・コンパニー・リミテッド(現・キリンホールディングス)、札幌麦酒会社(現・サッポロビール)、清水組(現・清水建設)、東京ホテル(現・帝国ホテル)、抄紙会社(現・王子製紙、日本製紙)、共同運輸会社(現・日本郵船)、東京石川島造船所(現・いすゞ自動車)、川崎造船所(現・川崎重工業)など、名の知れた企業や組織を挙げるだけでもたいへんな数になります。

 

 今で言うところのスタートアップですが、多くの企業が現在も存続していることに驚きます。渋沢の「事業やビジネスに対する考え方」がいかに本質を突き、サステナブルなものかが窺い知れます。
渋沢は会社を立ち上げ、
経営していくにあたり大切なことを4つ挙げています。

 

(1)道理正しい仕事か。

(2)時運に適しているか。

(3)己の分にふさわしいか。

(4)人の和を得ているか。

 

 どんなに儲かる商売でも「道理正しい仕事」でなければいけない。渋沢栄一のメッセージの根幹でもある『論語と算盤』そのものです。道理正しい仕事でなければ、決して長続きはしない。それこそ、渋沢の中心にあるビジネスマインドです。

 

 そして「時運に適しているか」。その時代における「大衆のニーズを捉えているか」と言い換えてもいいでしょう。道理正しいだけではビジネスはうまくいかず、時代のニーズも大事である、と渋沢は説いています。

 

 さらには「己(自分)の分にふさわしいか」。これもなかなか大切な視点で、いかに道理正しく、時運に適していたとしても、分不相応のビジネスでは決してうまくいきません。いたずらに大風呂敷を広げるのではなく、自分の身の丈にあったことをすべし。そう渋沢は教えています。

 

 最後は、「人の和を得ているか」。今の言葉で言えば、コミュニケーションやコラボレーションにも通じるものです。リーダー1人が暴走し、誰もついて来ないような組織ではうまくいかないでしょうし、自社のことだけを考えて、顧客や取引先、関係者とのつながりをないがしろにしているようでは商売は成り立ちません。

 

 そんな4つを渋沢は挙げています。この4つの項目を見る限り、古典どころか、今のビジネスにこそ最重要なポイントではないでしょうか。もっと言えば、ビジネスに留まらず、人として生きていくための「大事な4要素」と言えるかもしれません。2020年代を迎えた現代に、この4つを社是や経営理念に掲げていたとしても、なんら違和感はありません。

 

 渋沢が経営に大きく関わった企業の一つである清水建設に、私は講演で伺ったことがあります。清水建設では今でも渋沢栄一の教えを守り『論語と算盤』そのものを社是にしています。

 

 清水建設の公式サイトの「経営方針」には、

 

《当社は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである、道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、当社が経営活動を通じて果たすべき社会的使命を「経営理念」として定めました。》

 

 とはっきり書いてあります。

 

 1887年、清水建設の3代目店主が34歳の若さで亡くなったとき、当時8歳だった息子があとを継ぐことになりました。社員30名足らずの頃です。

 

 そんなときに「ぜひ相談役になってください」と渋沢のところに依頼があり、それから30年以上にわたって相談役を務めたと言います。

 

 清水建設の人に話を聞くと、当時、渋沢は毎週のように会社を訪れ「大丈夫か?」と心配してくれると同時に、先に述べた「4つの要素」を繰り返し説いたと言います。

 

 経営に対して、そうした揺るがない軸を持っていたからこそ、渋沢が関わった多くの企業や組織が何十年も経った今でも発展し、存続しているのでしょう。

 

 

 以上、田口佳史氏の新刊『渋沢栄一に学ぶ大転換期の乗り越え方』(光文社新書)をもとに再構成しました。渋沢の生涯をひもときながら、私たちがいまを生きる上で学ぶべきことを考えます。

 

●『渋沢栄一に学ぶ大転換期の乗り越え方』詳細はこちら

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