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辻井伸行の母校・上野学園大学、学生に廃学告知はZoomで! 経営者は「バッハの楽譜」を売却し…

社会・政治 投稿日:2021.03.09 17:00FLASH編集部

辻井伸行の母校・上野学園大学、学生に廃学告知はZoomで! 経営者は「バッハの楽譜」を売却し…

上野学園大学上野キャンパス(東京都台東区)。右は売却が噂されている石橋メモリアルホールが入るビル

 

 盲目の天才ピアニスト・辻井伸行氏(32)が卒業した名門音大・上野学園大学が “廃学” になろうとしている。2021年の4月から新入生の募集が停止され、教員たちは失職の危機にあるのだ。

 

 1904(明治37)年に設立された上野学園大学は、創設初期に校長を務めた石橋蔵五郎以来、同族経営が続いている。中高一貫の音楽教育を掲げる名門の音楽大学にいったい何が起こっているのか。

 

 

「音楽は、すぐに結果が出るものではありません。大学ではしっかり基礎を学んでもらい、卒業後に本人たちが頑張って、ようやく結果が出るものです。最近は、卒業生たちの活躍が目立ってきているところなんです。廃学だなんて、信じられません」

 

 そう嘆くのは、音楽学部の教員・A氏だ。

 

「音楽家にとって、大学の名前は卒業後もついてまわります。自分の出身校がなくなるというのは、演奏活動を生業とする音楽家にとって、あり得ないことだと、卒業生たちも憤慨しています。

 

 また、廃学というのは教育の保障がなくなるということで、『中高大一貫』の方針に魅力を感じて入学した高校3年生は、『別の大学を探して受験しなければならない』と困惑しています。保護者も怒り心頭です」(A氏)

 

 上野学園中高から大学に進学した音楽学部2年の美香さん(仮名)は、突然の廃学の危機に戸惑いを隠さない。

 

「2020年の7月に、突然、全学生にZoomミーティングに出席するよう通告があったんです。ログインすると、20分間のオンライン映像が流れました。画面にはパワーポイントで文字がずらずらと表示され、画面の右側に小さく、石橋香苗理事長の顔が小さくありました」(美香さん・以下同)

 

 語りかけるというより、文字を読んでいるような調子で、石橋香苗理事長は淡々と廃学の方針を伝えた。

 

「箇条書きで、『コロナの影響もあり、少子化が続く』『今後に関しては何も決まっていない』『武蔵野音大に転学する方法もある』というような内容が表示されていました。

 

 あまりに突然のことで驚いていたら、今度は前田昭雄学長が画面に出てきて、『私だって辛いんですよ』と言い訳みたいなことを10分ぐらい繰り返して、一方的に終了したんです」

 

 その後、学生と教員、そして事務方の三者での面談がおこなわれることになったが、心配した美香さんの母親も同席した。母親は、「中高一貫で大学まで進学してきたのに、娘の将来はどうなるのか」と学校側に尋ねた。

 

「『(カリキュラムの要である)オーケストラも廃止するから』という理由で、武蔵野音大への転入を勧められました。でも私は、上野学園大学が好きなんです。

 

 アットホームな環境で、先輩後輩の壁を越えて音楽家を目指す、志を同じくする仲間と切磋琢磨していました。それなのに、一方的に、校風も環境も異なる『ほかの音大に転入しろ』だなんて、ひどすぎます」

 

 今後の定期演奏会の開催や、転入試験に落ちてしまった場合の補償などについても明確な回答はなかった。保護者に対する説明会はなく、Zoomミーティングと同じような内容の手紙が、一通届いただけだったという。

 

「ところが12月になると一転、オーケストラを残すことにしたと、学校側から通達がありました。いったい私たちを、なんだと思っているのでしょうか」

 

 しかし、カリキュラムは大幅に縮小される予定で、それにもかかわらず、2021年度以降も学費は変わらないという。「両親に申し訳ない」と美香さんは語る。

 

「大学側は、学生の意向を無視して、ほかの音大へ転入するよう露骨に誘導してくるのです。転入したとしても、私は新しい人間関係を築く自信はありません。体調面もメンタル面も悪化したため、武蔵野音大への転入試験の受験を断念し、上野学園大に残ることを決めました」

 

 いまも美香さんは、将来に対する不安が拭えず、常にもやもやした気持ちが燻っているという。

 

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