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確定申告シーズンに贈る「私がマルサに踏み込まれた瞬間」

社会・政治 投稿日:2012.03.07 00:00FLASH編集部

リーマンショックで世界経済が激動しはじめた2008年10月9日午前8時のこと。六本木ヒルズレジデンス16階の部屋の中、キングサイズのベッドで眠っていた磯貝清明さん(34)はインタホンの音で目を覚ました。まだ眠かったので黙殺を決め込んだが、しつこい。気になったので妹へ電話してみたところ、妹は声をうわずらせ「お兄ちゃん、今どこにいるの? 国税局の人たちがすごい人数で来たの。社長はいますかって」と言ったという。

キャバクラの店長から家業をついで金属スクラップ業を営んでいた磯貝さんは、そのかたわら2004年に資金100万円からFX(外国為替証拠金取引)を始めた。すぐに連戦連勝を重ね、ピークには利益10億円を突破。1日に200万円のスワップ金利をもらっていたことも。億万長者になった磯貝さんは月80万円の家賃を払い、ヒルズ族の仲間入りを果たす。しかし申告を怠っていた磯貝さんをマルサ(国税局査察部)は見逃さなかったのだ。

動揺した磯貝さんは、まず金塊2キロと手元の現金を泊まっていた知人に預けて逃がし、B銀行の通帳を18階のラウンジのソファに隠して本人もヒルズから遁走。しかし知人の税理士に携帯で相談すると、「すぐ帰ったほうがいい」と諭される。覚悟を決めマンションに戻ってドアを開けると、70平方メートルの部屋は捜査部の人間で埋め尽くされていた。郵便物や書類を調べる人、パソコンのデータを吸い出す人、隠し場所を見つける人など、各自てきぱきと仕事をこなす。

「B銀行の通帳は見つかったか?」と、リーダーとおぼしき捜査官が叫ぶ。銀行口座もあらかじめ突き止められていたのだった。問い詰められた磯貝さんは、観念してありかを白状した。部屋は夜の10時過ぎまで調べつくされ、駐車場に置いてある車の予備タイヤの中までチェックされた。その後、東京・大手町の国税局まで連れて行かれ事情聴取。解放されたのは深夜1時を過ぎていた。この日動員された捜査官は250人。ヒルズと会社以外にも、実家や元カノや従業員宅まで、一斉にガサ入れがおこなわれていたのだ。

実はマルサが来たときには、サブプライムショックの影響で磯貝さんの資産は底をついた状態だった。しかしだからといってお上が許してくれるわけもなく、所得税法違反で磯貝さんは懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)の判決を受ける。支払わなくてはならない所得税の総額は1億6000万円、重加算税6000万円。延滞税だけで毎日5万円ずつプラスされている。かつては六本木ヒルズでセレブ生活を謳歌した磯貝さん。いまや仕事場に併設された2畳の小部屋で暮らしている。それでも彼は「必ず完納します」とにっこり笑っていた――。

(週刊FLASH 2012年3月20日号)

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