4月13日、北朝鮮の”欠陥ミサイル”は発射1分後に爆発。金正恩党第1書記(29)の”威信”も同時に砕け散ったかと思われたが、その日の最高人民会議で「国防第1委員長」に就任した。『コリア・レポート』編集長・辺真一氏は言う。
「これで正恩は党・軍・国家の最高指導者すべてのポストに就いたことになる。今回の失敗をなんら問われることなくトップに立った。これが金日成、金正日と続く”革命の血統”です」
だが正恩にはその”血統”に関して秘められたタブーがある。祖父・金日成に「捨てられた」過去があったというのだ——。
正恩の母は、金正日の4番めの妻・高英姫。彼女が大阪・鶴橋生まれの在日朝鮮人だったことは知られている。’61年に北朝鮮に帰国後、万寿台芸術団の踊り子となりトップスターとして活躍。そして「喜び組」の接待役だったとき金正日に見初められ、妻となった。しかし……。
「北朝鮮では『出身成分』と呼ばれる身分制が細かく分類されており、日本から帰国した在日出身者はそれだけで下層とみなされます。高英姫が将軍様の妻となるのは異例中の異例といえます」(辺氏)
高英姫自身も当初は”側室”だった。そのため「金日成は高英姫の子である正哲や正恩を正式な孫とは認めなかった」と報じられていたのだ。
さらに金正日の死亡後、正恩が後継者として活動しはじめてからのこと。
「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」によれば、朝鮮労働党宣伝扇動部が高英姫が在日出身であることを「極秘事項」として決定。
「これらの内容を漏洩したり、むやみに話す者に対しては厳しく処罰する」としたのだった。
「高英姫の出自がタブー視されるのは、在日に対する明らかな差別」(在日朝鮮人)と憤る声もあるが、正恩にとっても、母が在日出身であることがタブー視されるのは複雑な思いに違いない。今回の強行発射は、実行力で“血統の正当性”を示そうとした正恩の勇み足だったのだろうか。
(週刊FLASH 2012年5月1日号)