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巨額損失「野村HD」中堅社員は1000万円以上目減り……「従業員持ち株制度」に恨み節

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.14 21:23 最終更新日:2021.04.14 21:23

巨額損失「野村HD」中堅社員は1000万円以上目減り……「従業員持ち株制度」に恨み節

 

「20年前には3000円くらいだったのが、今や500円台(笑)。ウチの価のことですよ」

 

 そう自嘲気味に話すのは、野村證券の現役社員。無理もない。野村ホールディングス(HD)が米国子会社の顧客との取引をめぐり、約2200億円もの巨額損失の可能性を公表したのが3月29日。同日、野村HDの株価は120円以上も急落し、4月14日現在の終値は571円と低空飛行を続けている。

 

 

「ウチには、全社員が給料の一部を持株会で積み立てる従業員持ち株制度があります。勤務年数15年以上なら、今は平均取得価格の半値もありませんから、含み損を抱えた状態です。損失額が1000万円単位は軽くある人もいるんじゃないですかね。積み立てた株式は、退職時に退会となって清算されますが、もはや会社に上納しているようなものですよ。そんな中で直撃したのが『アルケゴス問題』でした」

 

 このアルケゴス・キャピタル・マネジメントこそ、野村HD子会社が巨額損失を出した顧客の名である。韓国系投資マネージャーのビル・ファン氏によって2013年に設立。金融規制の緩いファミリーオフィス(FO)という形態で、富裕層を相手にその家族資産を管理する会社だが、運用失敗で各金融機関の融資が焦げ付いた。

 

 米金融調査会社のアナリストが解説する。

 

「海外金融大手では、クレディ・スイスも5200億円の損失が生じる見通しです。逆に米国のゴールドマン・サックス(GS)とモルガン・スタンレーはいち早く強制精算し、大きな損失を回避することができました。資金を失ったアルケゴスは破綻し、逃げ損ねた日欧のプライムブローカーに連鎖的な損失が生じたのが、アルケゴス問題の構造です」

 

 ではなぜ、野村HDら日本勢は売り逃げに失敗したのか。「バブル期の『尾上縫事件』を彷彿とさせます」と語るのは、経済評論家の杉村富生氏。

 

「日本でバブル絶頂期、大阪の料亭の女将に日本興業銀行が数千億円を融資し、証券マンが日参したという、昭和金融史に残る詐欺事件です。彼女は『神がかった相場師』などともてはやされましたが、一皮剥けばまったく実態がありませんでした。今回のアルケゴス問題は、それに似ています。

 

 ビル・ファン氏が100億ドル(1.1兆円)も資産があると吹聴していたからこそ、名だたる金融機関が巨額を貸し付けてしまったのです。しかし、彼は2012年にインサイダー取引の疑いで米証券取引委員会に摘発されるなど、曰く付きの人物です。にもかかわらず、野村はむしろファン氏との関係を強化してきたといわれています。その辺りのリスク管理の甘さが、最悪の結果を招いたのでしょう」

 

 金融業界に詳しいジャーナリストの須田慎一郎氏も、手厳しく野村を叱責する。

 

「今回の件で野村は、完全に“負け組”の烙印を押されました。GSなど米国のメインプレーヤーと経験と歴史の差が表れましたね。海外の市場では意思決定の速さが重要。日本の金融がつけ込まれるのは、まさに『上司と相談してきます』なんて悠長なことをやっているからです。いずれにしても、今後の体制をどう構築していくのかが問われます」

 

 2020年4月に奥田健太郎CEOが就任してから、業績絶好調だった中での落とし穴。野村HDの信頼回復は急務だ。

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