社会・政治
広瀬アリスに役所広司も出演…タクシー社内CMでよく見る「人事システム企業」コロナ禍でも右肩上がりの秘密は?
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.16 20:00 最終更新日:2021.04.16 20:00
タクシーに乗って、後部座席(左側)眼前のモニターに流れるCMを目にされる方も多いだろう。役所広司、広瀬アリス、小池栄子、おぎやはぎなど一流芸能人が登場し、「人事」「採用」「クラウド」「マッチング」といった文字が画面に躍る。
上記にあげた芸能人が出演するのは、業界で「タクシービジョン」と呼ばれるモニターに流れる動画広告のシェア50%以上を占めている「人事管理システム」企業のCMだ。なぜ、企業向けのサービスを展開する企業が、一流芸能人を起用した動画広告を、タクシーで流しているのか。
【関連記事:さらばクラウン「セダン型タクシー」消滅で街の風景が変わる】
「我々のターゲット顧客である経営者は、よくタクシーを利用します。タクシーCMは、テレビCMに比べると掲載料が安く、そのぶん認知度の高いタレントさんの起用に回せるんです」
そう語るのは、人事評価コンサルとクラウドサービスを提供する「あしたのチーム」代表取締役社長CEOの赤羽博行氏。同社も数年前、ある有名俳優を起用した動画広告を制作し、タクシービジョンで流していた。
「タクシーCMがまだ黎明期だった2018年に、小泉孝太郎さんにイメージキャラクターをお願いし、けっこうな量の動画広告を流してもらっていました。きっかけは、当時タクシーCMを取りまとめていたPR会社から、提案をいただいたことです。
『テレビCMのように掲載料にお金をかけずに、一流芸能人を使って動画を作り、それをあちこちで配信したほうが、会社の知名度を上げられますよ』
その提案に乗って、徹底して動画広告を投下したところ、同業他社さんも続々とタクシーCMを始められて、いつの間にか激戦区になったんです」
「タクシーCMといえば人事管理システム」という印象には、そんな裏事情が――。タクシービジョンでの動画広告が普及すると、先行組にとって、意外な “追い風” が吹くことに。
「タクシーCMが人気枠になってしまい、掲載料が高騰しました。とくに、乗車開始からの数分間の枠は、値段がものすごく上がりましたね。
じつは2020年の1年間、私どもはタクシーCMを1回も出していないんですよ。コロナ禍で、タクシーに乗る経営者が減ったのを見越したという事情もあります。ですが、いまだに弊社は『小泉孝太郎さんの(広告の)会社』としてイメージが残り続けているんです。
私どもと同じく初期からタクシーCMを出していた、某有名採用系企業の社長も『最初にどれだけ露出したかが重要で、広告を流してないのに “見たよ” と言われる効果がある』とおっしゃっていました。
その言葉どおり、競合が増えるほどマーケットが作られていき、今はまさに “戦国時代” なんです。同業他社さんがCMを流してくださるほど、『CMで見たことあるから、あしたのチームの話も聞いてみよう』という流れになっている実感があります」
その背景には、タクシーCMという “枠” の普及があることはもちろん、各社が続々と一流芸能人を起用する投資ができるほどの、人事管理システム業界全体の躍進がある。コロナ禍にあって、右肩上がりの業績が続く理由とは?
「日本の人事は、たとえば同じ管理部門の経理などと比べて、圧倒的にシステム化・デジタル化が遅れていました。それが働き方改革とコロナ禍によって、自社で管理する限界に達してしまったのです。
年功制、終身雇用、新卒一括採用といった従来の日本型雇用システムが、徐々に職種・能力別のいわゆる『ジョブ型雇用』に転換したり、出社しない社員を評価したりと、企業が抱える課題は多くあります。現在、人事管理システム企業が乱立しているのも、そこに需要とビジネスチャンスがあるからにほかなりません。弊社もコロナ禍以前と比べ、約3倍お問い合わせをいただくようになりました。
ただ、一口に『人事管理システム』といっても、じつは業界内に似たようなサービスを提供している会社が競合しているわけではなく、それぞれ別の得意分野に特化した会社の総称です。いずれは、たとえば大資本に牽引されて、大合併なんてことも、あるかもしれません」
CMの裏側に、時代の変わり目を垣間見た。
取材&文・木下拓海