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「トリチウムゆるキャラ」にプロの評価は? 人気デザイナーが一刀両断「デザイン以前の問題です!」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.20 18:13 最終更新日:2021.04.20 21:58

「トリチウムゆるキャラ」にプロの評価は? 人気デザイナーが一刀両断「デザイン以前の問題です!」

 

 4月13日、政府が福島第一原発の汚染処理水を海洋放出すると決定したその日、復興庁は処理水に含まれる放射性物質・トリチウムの安全性をPRするチラシや動画をホームページで公開した。

 

 チラシや動画には、ウーパールーパーのようなデザインに“ゆるキャラ”化されたトリチウムが登場。トリチウムは水道水や川の水にも普通に含まれている、と安全性を強調している。

 

 

 ところが、このキャラクターについて「考えが浅はか過ぎる」「逆効果」と、SNSなどで批判の声が殺到。国会でも「安全だと意図的に誤解を生むのではないか」などの質問も出て、翌14日には公開中止を余儀なくされたほか、20日には平沢勝栄復興相(75)が閣議後に正式に謝罪するなど、大きな波紋を呼んでいる。

 

 原発処理水の海洋放出については、風評被害を訴える漁業関係者や、海洋汚染を非難する中国や韓国など、国内外から批判が噴出している。ところで、純粋にこれをキャラクターとして見たとき、プロのデザイナーはどう評価するのか。

 

 愛知県岡崎市の非公式ご当地キャラ「オカザえもん」や、中京テレビのローカル番組『前略、大とくさん』のキャラクターデザインをした、現代美術作家の斉と公平太氏(48)に聞いたところ、「そもそも構図に初歩的な問題がある」と語った。

 

「デザインの技術的な面から気になる点は2点。まず、うつ伏せで水に浮かんでいるポーズなのに、足の位置が右と左で水平ではないという点が、パッと見ていちばん気になりました。

 

 また、パソコンソフトで描いた正確な円や、楕円、均質な線をそのまま使用しているので、形の不自然さが際立ち、違和感を抱きます。立ちポーズのキャラなら平面的でもよいのですが、うつ伏せのポーズで奥行きがあり、立体の構造ができてしまっているため、余計にです。

 

 そもそも、(トリチウムについて)図版でわかりやすく解説するという意味では、キャラクター化する必然性はありません。わざわざキャラ化することで『何か、裏の意図があるのでは?』と勘ぐらせてしまい、マイナスです。

 

 また、キャラ化には『楽しい』『面白い』といったイメージを与えるのに効果的な反面、場を間違えると『ふざけている』『バカにしている』という印象を与えてしまいます。

 

 今回の件はデザイン以前の問題ですが、一般的には依頼主の意向を汲み取るのがデザイナーです。ただ、依頼主の上には、さらに依頼主がいるもの。このような公的な事案では、それは当事者である市民です。今回の例では、クライアントとしての市民がどう受け取るか、きちんと意識されていなかったのではないでしょうか」

 

 復興庁の失態は「依頼主の依頼主」を、市民ではなく、原発処理水の安全性をPRしたい政府と受け取ったことにある。政府の意向を過剰に忖度したため “裏の意図” がバレてしまい、「バカにしている」という反感を招いてしまったのだ。

 

 今回のPRチラシや動画は、復興庁の「放射線等に関する情報発信事業」の予算・3億円のうち、数百万円を使って広告代理店に発注し、作成された。大金を使ってこの結果では、汚染処理水が安全だといくら聞いても、素直には信じられない。

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