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【4月23日の話】消防車の誕生…窒素で火を消し、オフロードも突き進む最新型とは
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.23 06:00 最終更新日:2021.04.23 06:00
1907年(明治40年)4月23日、大阪市に「火防協会」が設立された。
現在、国内シェア約6割を誇り、「消防車のトップメーカー」として知られる株式会社モリタの前身である。その功績が認められ、4月23日は「消防車の日」として登録されている。
100年以上、人々の命と安全を守り続けてきたモリタは、どのような道のりをたどってきたのか。株式会社モリタホールディングスの広報室担当者に話を聞いた。
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「江戸時代、消防車ができる前は『破壊消火』という手段がとられていました。要は、燃えている建物の周囲を壊して、それ以上、延焼しないようにする方法です。
その後、破壊消火に加え、『消火用水鉄砲』で火を消す形に発展しました。創業当時のモリタも、そのような装置を開発し、提供していました」
1907年に設立されたモリタは、1910年に日本初のガソリンエンジン付き消防ポンプ車の開発に成功する。その後、消防車は進化を重ねるが、背景には徹底した現場主義があるという。
「大きな災害が発生した際、モリタグループの研究・開発のメンバーは必ず現場に足を運びます。現地で活動された消防士の方に話を伺ったり、災害現場の状況などを情報収集し、研究・開発に活かしています」(広報)
たとえば、原発事故を起こした東日本大震災(2011年)の教訓を活かし、災害現場の空気から窒素濃度を高めた気体を作り出し消火する車両も開発。
「われわれが吸う空気は、78%が窒素で、21%ほどが酸素です。酸素を除去し、窒素濃度を高めた気体を連続的に放出して火を消します。
原発やサーバールーム、美術館など、水をかけてしまうことで従来の機能が損なわれ、大きな損害につながってしまう場面を想定しています」(同)
また、熊本地震(2016年)も、新型車の開発につながった。
「熊本地震では、道路が被災したことに加え、瓦礫などで、車両の通行が困難になりました。その結果、消防車が現場に到着するまで何時間もかかってしまうケースもありました。その教訓をもとに開発したのが『Red Ladybug』です。小型オフロード型の消防車で、バギーに近いイメージになります」(同)
2019年4月、モリタは中期経営計画『Morita Reborn 2025』を発表し、『グローバルな総合防災ソリューション企業』を目標に掲げた。
「風水害など多様化する災害に対し、どういったものを開発・提供すれば、安全・安心な社会づくりに貢献できるかを考えて、ご提案させていただいております」(同)
具体的には、水害を想定した「救助用エアボード」や、資材の搬送に便利な「折りたたみ式電動資機材搬送車」などだ。災害大国といわれる日本で、モリタの技術は輝き続ける。
写真提供・株式会社モリタホールディングス