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【4月30日の話】軍艦マーチ初演日…しかし通説には「なんの根拠もない」だって

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.30 10:30 最終更新日:2021.04.30 10:34

【4月30日の話】軍艦マーチ初演日…しかし通説には「なんの根拠もない」だって

海軍の軍楽隊(1903年)

 

 1900年(明治33年)4月30日、海軍による「大演習観艦式」が神戸沖で実施された。参加艦艇49隻という大規模なもので、初めて「観艦式」という言葉が使用された。

 

 このとき、観艦式へ向かう軍艦で、瀬戸口藤吉が作曲した「軍艦マーチ」(正確には「軍艦行進曲」)が初めて演奏されたと伝えられている。

 

 

 だが、元海上自衛隊で、東京音楽隊長を務めていた谷村政次郎さんは、「私が調べたところ、どうもこの日付には根拠がないのです」と明かしてくれた。

 

「軍艦行進曲の初演日が4月30日とされたのは、1940年に日比谷公会堂で『軍艦行進曲四十年記念大演奏会』が開催されたときです。

 

 このとき、音楽評論家の堀内敬三さんが『軍艦行進曲』初演の日付を推察され、それ以降【明治33年4月30日、神戸沖の観艦式場へ向かう旗艦「富士」の軍楽隊によって演奏された】という話が定説になりました。

 

 堀口さんは、1941年に刊行された『吹奏楽』という雑誌で、初演の日付について『海軍の古老から聞いた』と証言されています。

 

 しかし、大事な楽曲を初めて披露するために、式へ向かうタイミングをわざわざ選ぶでしょうか。疑問を持ち、そこからいろいろと調べてみたのです」

 

 谷村さんが調べたところ、観艦式当日の様子が明らかになった。すると、そもそも軍艦「富士」は、式当日に稼働していなかったことが判明する。

 

「防衛研究所が所蔵する『明治三十三年公文備考』という資料を見ると、天皇陛下が乗る御召艦『富士』艦内で直前に伝染病が発生し、急遽『浅間』に変更されたとの記載があったのです。

 

 電報のやり取りも残っていますが、現場はかなり切迫したようです。『富士』にすでに乗り込んでいたであろう軍楽隊は参加できませんから、横須賀の軍楽隊を手配するなどの調整がおこなわれました。

 

 資料を元に考えると、海軍古老の話がどうにもいい加減だったのではないかと考えます。その他にもあれこれ調べましたが、軍艦行進曲の初演日を特定できる資料は見つかりませんでした」(谷村さん)

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