社会・政治社会・政治

アメリカで進む「メンソールたばこ禁止」と「マリファナ解禁」…ティーンの喫煙と戦え!

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.30 16:30 最終更新日:2022.12.07 15:29

アメリカで進む「メンソールたばこ禁止」と「マリファナ解禁」…ティーンの喫煙と戦え!

禁止されるメンソールたばこ

 

 FDA(アメリカ食品医薬品局)は4月29日、メンソールたばことフレーバーつき葉巻を国内で禁止する方針を発表した。

 
 決定は科学的根拠に基づくもので、メンソールたばこを禁止することで、92万3000人の喫煙者を禁煙させ、23万7000人の黒人の死亡を防げるという。

 

 

 メンソールは米国たばこ市場の3分の1以上の売り上げを占めている。CDC(疾病予防管理センター)のデータでは、12歳から17歳の54%がメンソールたばこを喫煙し、黒人ティーンでは7割がメンソールだった。大人では黒人の93%がメンソール派で、白人の44%よりも圧倒的に多く、特に女性の割合が高かった。

 

 メンソールはニコチンの不快感やのどへの刺激を和らげるため、フレーバーのない普通のたばこに比べて中毒になりやすく、健康被害を増やすという。

 

 アメリカでは2009年にメンソール以外のフレーバーつきたばこの販売が禁止されており、現在、唯一許されているフレーバーがメンソールである。FDAは2018年にもティーンの喫煙と戦うためにメンソールたばこの禁止を訴えたが、トランプ政権下で提案が通らなかった経緯がある。

 

 今回は人権団体からメンソールを禁止するよう提訴されたことを受けての発表で、今後はニコチン摂取につながる電子タバコについても取り締まる考えだ。FDAは市場からメンソールをなくすことに焦点を定め、個人は取り締まらない。担当者はこれからルール作りに入り、公聴の期間を入れて来年中にも実施したいと語っている。

 

 フレーバーたばこの禁止に連邦議会の承認は必要ないそうだが、たばこ業界の反発は必至である。

 

 州レベルでは、2019年のマサチューセッツ州を皮切りにメンソールたばこを禁止している所は8州にのぼり、さらに小さな自治体レベルで禁止しているところは少なくとも300ある。しかし、係争中のところも多く、ミシガン州のように条例が却下された例もあり、禁止策はゆっくりとしたペースで広がっていた。

 

 今回の発表を受けて、合衆国保健福祉省(HHS)は、「バイデン政権の “すべてのアメリカ人の健康を改善し格差をなくしていこうとする政策” の一環であり、人々の命を救うものである。アメリカはたばこによる病気や死亡を過去のものにしなくてはならない」と支持を表明した。

 

 たばこの禁止が進む一方で、マリファナ合法化の動きは拡大を見せている。医療用マリファナはすでに36州で合法、娯楽用としてもワシントンDCと16の州で21歳以上の使用を認めており、今後バージニア州など数州でも合法になる予定だ。

 

 医療用マリファナはガン治療後の吐き気を抑えたり、神経の障害による痛みを軽減する際などに使用される。娯楽用はオイルやクッキー、グミなどの形でも販売され、広く流通している。

 

 最近のアメリカでは、たばこは肺や心臓へ悪影響を及ぼすが、マリファナの影響は小さく、むしろ病気の痛みを軽減すると、価値観の逆転現象が起きている。実際、サンフランシスコでは、いまマリファナは合法的に買えるが、メンソールたばこは買えない。これが今後のアメリカの新常識になっていくのかもしれない。(取材・文/白戸京子)

 

※写真:AP/アフロ

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

社会・政治一覧をもっと見る