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京大防災研教授が解説! 大地震で揺れにくい「ポツンと安全地帯」が最新調査でわかった【地名19カ所つき】

社会・政治 投稿日:2021.05.03 11:00FLASH編集部

京大防災研教授が解説! 大地震で揺れにくい「ポツンと安全地帯」が最新調査でわかった【地名19カ所つき】

国立研究開発法人防災科学技術研究所のJ-SHISをもとに本誌が作成

 

 2021年3月26日に、政府の地震調査委員会が「全国地震動予測地図」の2020年版を発表した。この予測地図は、今後30年以内に強い地震に見舞われる確率を地図上に色分けして表示したもので、防災科学技術研究所ウェブサイト内の「地震ハザードステーション」では、250m四方を最小単位として、地点ごとの地震発生の確率を確認できる(冒頭の地図を参照)。

 

 

 地図中、濃度の高い部分は、今後30年以内に震度6強以上の揺れに見舞われる確率が6%以上の場所だ。東京の多くの場所は濃いが、一部に斑点のように、薄い場所がある。これは、ほかの地域より強い揺れに襲われる可能性が低い、相対的な「安全地帯」といえる。だが、なぜこのように “ポツン” と「安全」な場所があるのだろうか。

 

「地盤が違うのです」

 

 そう語るのは、予測地図の作成に参加した、京都大学防災研究所の岩田知孝教授だ。

 

「今回の調査結果は、島しょ部を除き、首都圏を含む関東地方全域でボーリング調査と微動アレイ観測データを反映させることができました。ビルなどを建てる際、事前に業者がボーリング調査をおこないます。

 

 そのデータの収集と、揺れの伝わり方を調べる微動アレイ観測をきめ細かくおこない、関東地方の地盤のモデルを作成したのです。そして、そのモデルからわかる、地震の伝わりやすさを、地図に反映させました」

 

 地図を公表した文部科学省研究開発局も、こう話す。

 

「今までの地震動予測地図は、その場所が埋立地なのか、山地なのか、三角州なのかなどで分類し、類推して値を出すことしかできませんでした。しかし今回は、実際に調査した値を反映しているので、現実に近い地盤の状態を地図に表わすことができています」

 

 地盤の揺れの伝えやすさを数値で表示したものが「表層地盤増幅率」だ。同じ規模の地震が来ても、その場所の実際の揺れの強さは、表層地盤増幅率によって変化する。

 

 たとえば、地図上で濃く表示されている東京都江東区辰巳二丁目付近(1)は、表層地盤増幅率が2.34だ。一方、東京都世田谷区松原一丁目付近(2)の表層地盤増幅率は、たったの1.08だ。つまり、同じ地震が起きても、地盤による揺れへの影響が2倍も変わってくるのだ。

 

「こうした地盤増幅率は、地表から数十メートルまでの表層地盤が、固いか軟らかいかによって差が出ます。地盤が軟らかいほど、揺れが大きくなります。

 

 そして地盤というものは、場合によっては距離がたった250m違うだけでも、かなり違うことがわかりました。これほど細かく、詳しい地図ができたことの意義は大きいです。地震が来た際に、自宅や会社、避難所といった場所が相対的に安全かどうかを、この地図を活用し、事前に知っておいてほしいです」(岩田教授)

 

 立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学氏は、予測地図だけでなく、住宅の構造や老朽化にも注目するべきだと語る。

 

「現在は、高度経済成長期に建てられた住宅が、続々と築50年を迎えています。それらの住宅は、現在の基準からすると耐震性に不安を抱えているものが多い。今回の『安全地帯』から外れている場合、一戸建てよりも基礎工事に費用がかけられる集合住宅に引っ越すのも、ひとつの方法です」

 

 いずれ、必ずやってくる大地震。この地図をもとに “安全地帯” に引っ越すのが正解かもしれない。以下では、関東圏に点在する「ポツンと安全地帯」を列挙する。

 

【関東圏のおもな「ポツンと安全地帯」】
・東京都大田区東雪谷三丁目 付近
・東京都北区桐ケ丘一丁目 付近
・東京都新宿区新宿三丁目 付近
・東京都世田谷区松原一丁目 付近
・東京都豊島区雑司が谷三丁目 付近
・東京都中野区中野一丁目 付近
・東京都文京区西片二丁目 付近
・東京都港区高輪三丁目 付近
・東京都目黒区柿の木坂一丁目 付近
・東京都国分寺市東元町三丁目 付近
・神奈川県足柄上郡開成町延沢 付近
・神奈川県横浜市泉区岡津町 付近
・神奈川県横浜市保土ケ谷区峰岡町一丁目 付近
・千葉県匝瑳市飯高 付近
・千葉県船橋市西浦一丁目
・千葉県松戸市根本 付近
・埼玉県さいたま市見沼区大字南中丸 付近
・埼玉県桶川市大字加納 付近
・埼玉県加須市大字久下 付近

 

(週刊FLASH 2021年5月11日・18日合併号)

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