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いまでは当たり前の「タイムシフト」始まりはソニーの「ベータ」/5月10日の話

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.05.10 06:00 最終更新日:2021.05.10 06:00

いまでは当たり前の「タイムシフト」始まりはソニーの「ベータ」/5月10日の話

 

 1975年5月10日、ソニーが「ベータマックス」方式による初のビデオテープレコーダー『SL-6300』を発売した。

 

 当時、世間に認知されていたビデオは、あくまでも業務用だった。それを一般家庭に届けるために、ソニーはどう取り組んだのか。ソニーグループの広報担当者に話を聞いた。

 

 

「当時の業務用ビデオデッキは、基本的に、冷蔵庫くらいの大きさで、価格も数百万円しました。一般家庭で使えるようなビデオは、まだなかったのです。そこでソニーは、家庭向けの商品開発を始めました。

 

 1965年に発売した『CV-2000』は、卓上にのるくらいには小型化していました。しかし、これはオープンリールという、リールに巻かれたテープがむき出しの規格でした。使用者はテープを慎重にはめ込む必要があり、手間がかかるため、普及はしませんでした」

 

 その後、試行錯誤を重ねたソニーは、1971年、カセットタイプ型『U-マチック』の商品化に成功するが、こちらもヒットはしなかった。

 

 家庭に受け入れられるビデオを作るため、井深大社長(当時)は徹底的にサイズの小型化を目指した。

 

「当時、カセットのサイズをどのくらい小さくするのか、という議論が起こりました。話し合いを重ねた末、モデルとなったのが、当時、社員が使っていた『ソニー手帳』です」(前出・広報担当者)

 

 ソニー手帳の大きさを目標に、技術チームは奮闘の日々を送る。その結果、新規格「ベータマックス」が誕生した。

 

 カセットサイズは当初の目標どおり、文庫本サイズ。レコーダーの重さも「U-マチック」の3分の2となった。そして、その年の5月10日、ソニーは満を持して初のベータ式ビデオを発売したのだ。

 

 価格は22万9800円と、「U-マチック」の6割ほどに抑えた。多くの家庭にベータのよさを知ってもらうため、マーケティングにも力を入れた。

 

「宣伝文句には “タイムシフト” というコンセプトを当てはめました。それまでは、番組の放送時間にテレビの前にいないといけなかった。

 

 しかし、『ベータマックス』が家にあれば、時間に拘束されることなく、好きなときに好きなだけテレビを観られるんだよ、ということを徹底的にアピールしました」(同)

 

 その後、テレビの記録技術はVHSやDVDとなり、いまではスマホひとつでテレビや映画を観ることができるようになった。ソニーの「ベータマックス」が、テレビ文化の新たな1ページをつくったのだ。

 

写真提供・ソニーグループ株式会社

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