社会・政治
東北の超名門高校で「パワハラ応援歌練習」元生徒が告発「絶叫強制された」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.05.19 06:00 最終更新日:2021.05.19 06:00
「当時は、毎日のように自殺を考えていました。今でもあの『応援歌練習』を思い出すとつらいんです……」
憤った表情でそう語るのは、岩手県立盛岡第一高校OBのAさん(20代・男性)だ。
【関連記事:大下容子アナも絶句『ワイド!スクランブル』で陰湿パワハラ】
「応援歌練習」とは、同校で長年続けられてきた伝統行事。“バンカラ” な学生服に身を包んだ応援団の生徒が中心となり、入学直後の新入生に応援歌を覚えさせ、在校生としての自覚を促すというものだ。県内随一の進学校である同校をはじめ、東北の名門高校の多くでおこなわれている。
「でも、そのやり方があまりにひどいんです。竹刀を振り回す上級生に威圧されながら、応援歌を絶叫して歌うことを強制させられるんです」
Aさんは自身の経験をもとに、被害を訴えるサイトを立ち上げた。すると、在校生らから続々と告発する声が集まってきたという。
今年入学した盛岡第一高校の生徒は、「恐怖の1週間」をこう振り返る。
「入学式後に1週間ほど応援歌練習が続きました。突然、在校生の応援団員と有志が教室に来て、机や黒板を叩きながら脅すのです。
その場で入学前に歌詞を渡されていた10曲近い応援歌を歌わされ、少しでも歌詞を間違えたり、止まったりしてしまうと『どうして覚えてこなかったんだ』と罵声を浴びせられる。
約2時間、同じ姿勢を強制させられることもあります。練習中は、教師にスマホも取り上げられました」
さらに、他校の在校生からも被害の報告が寄せられた。
「カーテンを閉めた暗い教室で指導されました。うまく歌えないと、太鼓部屋と呼ばれる別室に連行されます。指導中、過呼吸で途中退出したコも……」(花巻北高校の在校生)
「応援団員が教室に来て、教室内の机を蹴り倒して女子生徒が泣いていました。『容赦しねぇ』と暴言も吐いていました」(水沢高校の在校生)
こうした指導のやり方は、前出のAさんが在校していた時代と、変わっていないという。
「練習の最終日に、これまで厳しかった応援団員が突然、優しくなるというパターンも共通していました。まさに “洗脳” ですよ」(Aさん)
水沢高校に子供を通わせる保護者の一人は、こうした応援歌練習に疑問を持ち、学校側に抗議したという。
「応援歌練習がショックで不登校になる生徒もいます。教員が直接指導しているわけではありませんが、上級生や応援団に協力しており、明らかに学校側に責任がある。しかも新入生はほぼ強制的に参加させられている。こんな応援歌練習は即刻やめるべきです」
高校側は取材にこう話す。
「創立141年を迎える本校には脈々と受け継がれてきた伝統があります。その伝統の一つが応援という文化です。(中略)受け継がれてきた伝統を継承し伝えていかなければならないと考えている生徒も多くいます」(盛岡第一高校)
ほかの高校も同様の回答で、“伝統” を大義名分にして、応援歌練習の中止を考えている高校はなかった。
『ブラック部活動』などの著者で、教育社会学を専攻する名古屋大学准教授の内田良氏は、応援歌練習について「ここまでひどいとは思わなかった」と次のように話す。
「部活と同じで、そもそも朝早い時間や、放課後の活動を生徒に強制してはいけません。授業ではないのに、生徒に応援歌練習を強制するのは大問題です。そのうえ、練習は暴力的な管理方法で、明らかなパワハラ。淘汰されてしかるべき伝統です」
バンカラ文化継承のために、パワハラが許されるはずはない。
(週刊FLASH 2021年6月1日号)