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全国初の試み! 茨城県が未解決殺人事件に「自治体報奨金制度」を導入
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.05.28 16:00 最終更新日:2021.05.28 16:00
茨城県警が2020年に認知した殺人・強盗などの重要犯罪件数は202件に達し、けっして少なくない。そして、いまなお犯人逮捕にいたらず、手詰まり状態に陥っている未解決事件も少なくない。
茨城県はこれを打開するために、事件解決につながる有力な情報を寄せてくれた提供者に対して5万円の報奨金を支払う制度を設けた。
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自治体が事件解決のために予算を投入する例はほかになく、全国初という。報奨金の支払い適用期間は、2021年4月1日から2022年3月31日までとし、対象となるのは次の4つの殺人事件だ。
(1)2000年5月4日未明、茨城県牛久市中央3丁目のスーパー駐車場で、当時17歳の土木作業員の藤井大樹さんが殺害された強盗殺人事件。事件の概要は、被害者が交際中の女性と一緒にいたところ、見知らぬ4人の少年グループから暴行を受け、頭部を強打したうえ現金を奪われたというもの。4人とも被害者と同年齢とみられ、犯行後、現場から逃走した。
(2)2002年7月9日、茨城県五霞町川妻の利根川堤防沿いの農道脇用水路で遺体で発見された、当時15歳の都立女子高生・佐藤麻衣さん殺人・死体遺棄事件。被害者は足立区西竹ノ塚に住む都立上野高校通信制の1年生。遺体発見前の7月6日18時ごろ、アルバイト先の同僚に「これから(埼玉県)草加市内で友達に会う」と告げて別れた。同日19時ごろ、草加市内の神社でおこなわれた夏祭りを見物し、中学時代の友人に、「お祭りに来てる」と携帯電話で連絡し、目撃者もいるが、これを最後に被害者の足取りは消えた。
(3)2004年6月20日、茨城県坂東市(事件当時は岩井市)長須の市道脇用水路の草やぶで、意識不明の状態で発見後、市内病院で死亡した当時16歳の県立岩井西高校1年生の平田恵理奈さん殺人事件。草やぶで発見された当時、被害者は靴を履いておらず、靴下の汚れも着衣の乱れもなかった。死因は頚部圧迫の窒息死。被害者は事件前の6月20日午前1時ごろから5時ごろまでの間に、岩井市内のファミレスやコンビニなどに数回入店を繰り返し、女性との食事、おにぎり、コーヒーなどの購入が目撃されている。さらに午前5時45分、被害者は携帯電話で110番し、「財布をすられた」と連絡している。被害者が意識不明の状態で草やぶで発見されたのは110番連絡から約1時間後の午前6時50分ごろだった。
(4)2021年4月18日午後8時ごろ、茨城県東海村船場で住所・職業不詳の永山善一さん(63)が、頚部圧迫および胸部等刺傷の出血多量で殺害された事件。現場となった住宅には被害者の実母と実弟が住んでおり、同日午後、この住宅に被害者が訪れ、なんらかの原因で兄弟が口論となり、1階リビングルームで殺害された。この後、弟の永山誠容疑者は現場から軽乗用車で逃亡。20日、現場から約1.5km離れた村立図書館駐車場で、容疑者が使用した軽乗用車が発見された。茨城県警は、永山誠容疑者を殺人の疑いで全国に指名手配した。
東海村の事件を除いて3件は、いずれも事件発生から20年ないし、それに近い年月が経過しており、人々の記憶も薄らいでいる。茨城県警刑事総務課は、報奨金つき事件の対象にした理由を次のように説明する。
「1日も早く事件解決につながれば、との思いから今回の報奨金制度を設けたんです。対象の理由は、東海村の場合は事件発生からまだ間がなく、容疑者の氏名も明らかなこと。ほかの3件は、事件当時、被害者が未成年であったことなどを考慮したものです」
年月の経過は人々の記憶を曖昧にするだけでなく、事件現場の様相も変化させ、よりいっそう解決困難にさせている。
牛久市の事件の場合、事件当時は大型スーパーだった現場が、現在はドラッグストアに変わり、周囲には人家も増加している。
五霞町の事件の場合は、利根川の堤防改修工事がおこなわれ、遺体を運んだ犯人が車を止めたと思われる駐車場は道路に変貌するなど、当時の面影はほとんどない。
坂東市の事件では、被害者が通学していた岩井西高校は10年ほど前に廃校になった。事件現場には、肩に黒のデイバッグ、茶系のスニーカーを履いた事件当時の被害者の着衣姿の看板が立てかけてあるが、かなり色褪せている。
報奨金制度設置後の4月1日から5月20日まで、茨城県警には17件の情報が寄せられたという。茨城県警は引き続き情報提供を求めており、事件に関する情報は電話番号、029-301-0110(代表)に連絡を呼び掛けている。