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世界初のロータリーエンジン搭載車に、マツダの意地を見た/5月30日の話
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.05.30 09:00 最終更新日:2021.05.30 09:09
1967年5月30日、東洋工業(現・マツダ)が、世界初のロータリーエンジン搭載スポーツカー「コスモスポーツ」を発表した。
ロータリーエンジンは、一般的なエンジンとはまったく異なる、回転動が使われている。当時、ドイツのNSU社が実用化を目指していたが、そこにいち早く目をつけたのが、マツダの3代目社長である松田恒次だ。
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自動車ジャーナリストの佐藤篤司さんが、コスモスポーツの開発経緯についてこう語る。
「当時のマツダには、トヨタや日産などの大きな競合と戦うため、独自の技術を打ち出さなければいけない危機感がありました。そこで注目したのが、ロータリーエンジン実用化のニュースです。
松田社長はすぐにNSU社とライセンス契約を結び、1961年から開発を始めました。
まだまだ課題の多いエンジンでしたから、各メーカーも試しはしたものの、技術的にあきらめたところばかりでした。
しかし、マツダの技術者たちが粘りに粘って開発を続けた結果、1964年に東京モーターショーでコスモスポーツのプロトタイプがお披露目され、1967年、市販にいたります」
コスモスポーツが販売されたのと同時期、トヨタから2000GT、日産からフェアレディZなどのスポーツカーが発売された。
コスモスポーツの販売価格は148万円だが、当時の平均年収は約53万円。とても庶民が買える代物ではなかった。
それだけに、この頃のスポーツカーは人々の憧れであり、同時に各メーカーの技術力を象徴する役割を担ったといえる。
「ロータリーエンジンは一度実用化されましたが、1970年代、第一次オイルショックで燃費性能が問題視され、マツダ以外の各メーカーは開発をストップしてしまいます。
その後もマツダは開発を続けますが、2003年に発売したRX-8が最後のロータリーエンジン搭載車となりました。
しかし、近いうちにロータリーエンジンは復活します。2020年にマツダから電気自動車MX-30が発表され、同社の丸本明社長が、2022年前半からロータリーエンジンを発電機として使う技術を開発中だと明かしました。
もう一度、市販車にロータリーエンジンが搭載されることになります。
いまや、ロータリーエンジンの開発を続けるメーカーはマツダだけです。バンケル式という基本的なロータリーエンジンの形を引き継いできたのは、マツダの技術力と意地によるものだと言えるでしょう」