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日本からのアストラゼネカ製ワクチンに、台湾在住日本人は「中国製打ちたい」の声

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.06.10 20:00 最終更新日:2021.06.10 20:23

日本からのアストラゼネカ製ワクチンに、台湾在住日本人は「中国製打ちたい」の声

写真・ロイター/アフロ

 

 日本政府が提供した、英製薬大手アストラゼネカ製ワクチン124万回分が台湾に到着したのは、6月4日のこと。これを受け、台南市の黄偉哲(こういてつ)市長も同日、「すでに市内800人の日本人はリスト化されている」として、在台湾の日本人に優先的に接種する方針と明らかにした。

 

 しかし、台湾に駐在している日系企業社員は表情を曇らし、こう語る。

 

 

「アストラゼネカ製のワクチンには副反応についての深刻な症例報告があります。当然、こちらの日本人社会からは、まるで“毒見役”だという声が上がりました」

 

 アストラゼネカ製ワクチンにおける副反応については、さまざまな報道がある。6月10日、ニュースサイト『スプートニク』によると、アストラゼネカ製ワクチンを投与した人の中に軽度の血液凝固障害が起き、それが原因で出血するケースがあることを英国人研究者らが発見したという。調査結果は『ネイチャー・メディスン』誌に掲載されている。

 

“水際対策”では世界レベルで際立った成果を上げていながら、今年5月になって突如としてパンデミック状態となった台湾。日本政府がワクチンを提供することを明らかにしたのは、3日の参議院外交防衛委員会での茂木敏充外相の発言だ。

 

「これに対し、日本の厚労相にあたる台湾の陳時中(ちんじゅちゅう)衛生福利部長は、『(ワクチン)確保に台湾政府も努力している』と述べるに止まり、直接の謝意はありませんでした。日本政府の提案に対する、台湾政府内の意見集約ができなかったようです」(台湾在住記者)

 

 蔡英文(さいえいぶん)総統が「深い友情に心から感謝」とTwitterに投稿したことで、政権中枢や与党の民進党幹部からは日本政府に対し感謝の声が多く上がった。しかし、日本政府からの提案に“満場一致”の賛成とならなかったのは、やはり冒頭の日系企業社員のコメントにもある、アストラゼネカ製ワクチンの副反応への懸念があったからだ。

 

「接種の遅れが指摘されている日本の河野太郎担当相でさえ、アストラゼネカ製ワクチンについては、『配るほどある』と発言しています。つまり、『日本政府は余りものを送ってくるのか』という批判が、野党・国民党中枢から起こっていました」(前出・台湾在住記者)

 

 国民党は東日本大震災の際、200億円もの義援金を送った馬英九(ばえいきゅう)総統当時の与党。日本政府からの援助申し出がないのは、蔡政権の対日外交にあると問題視していたこともあり、副反応が多く報じられているアストラゼネカ製ワクチンの提供を受けるかどうかを考えあぐねていたのだという。

 

「蔡政権は水際作戦に血道をあげる一方、ワクチン確保にはまったく無為無策で、アストラゼネカ製ワクチンを約20万人分備蓄しただけでした。それも、パンデミックの発生後に医療従事者に接種したことで、ほとんど備蓄がない状態に。蔡政権はかつてない危機的な状況だったわけです」(前出・台湾在住記者)

 

 政府与党が一転して歓迎ムードになったのは、つまるところ副反応ありのワクチンしか選択肢がないことに対する目くらましの意味合いが大きいということなのだ。前出の日系企業社員はこう明かす。

 

「日台友好と言われれば、優先的な接種を断るのは難しいです。中国政府は2回、国内製ワクチンの無償供与を申し入れて断られていますが、じつは、大陸隣接地域の台湾国民は密かに中国で接種を受けています。われわれ日本人も、中国製を打ちたいというのが正直なところです」

 

 Twitterでは「#日台友好」というハッシュタグとともに、日本への感謝が見られるなかで、こんな声も……。

 

《アストラゼネカ製のワクチンは安全ではない、という話を聞きます。それが日本から台湾に送られてくるなんて・・・・・・》

 

《副反応の報道ばかりのアストラゼネカ製のワクチンを送ることが、本当に“日台友好”なの?》

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