アメリカでは、国民生活に関わるあらゆるものの値段が上がっている。
行動制限がまだ少し残ったなかで、さまざまな需要がふくらみ、うまく回らないまま経済が走り始めた感じだ。あちこちで労働力が不足し、半導体などの物資供給も不足している。
シリコンバレーのガソリンスタンドでは、高級ガソリン1ガロンが5ドルを超えるところが出てきた。日本流に換算すると1リットル148円ほどだ。
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先日発表された5月の消費者物価指数によると、ガソリン価格は先月より4%ほど上昇、パンデミックで安値だった昨年5月に比べると、56%も上昇している。
中古車価格は30%近く高騰し、新車が3%、アパレルが6%、全体平均では5%の価格上昇だ。
ウーバーやリフトといった配車サービスは、ドライバーが不足しているところに需要が増え、やはり料金が上がってきた。
レストラン業界は特に人手不足になっている。かつての人材がパンデミックを機に業界を敬遠し、新しい職についていることが原因だ。
人気のメキシコ料理チェーン、チポトレは、従業員確保の昇給を理由にメニューを4%ほど値上げした。マクドナルドも従業員の時給を上げると発表している。
オートミルクやタピオカティーなど食品の不足もある。いまスターバックスのアプリを開けると、供給不足により一部メニューがないかもしれないという、おことわり画面が開く。
半導体不足がコンピュータや自動車、携帯業界などに影響を及ぼしているが、レストランでオーダーを取るときに使う小さな端末も不足しており、レストラン業界の悩みは続く。
意外なところで品不足が出ているのが、プール用の消毒剤である。アメリカではアパートや一軒家にプールがついているのは珍しいことではない。
在宅勤務で自宅のプールを使用する時間が増え、新規の住宅建築も増加した。昨年の新設プールは前年比23%増だが、今年はすでにそれ以上の数のプールが作られたそうだ。
そこに市場の3分の2を占めていた消毒剤メーカーの工場火災が起きた。トイレットペーパーやマスクのときのような買いだめが始まり、店頭から消えた消毒剤がオンラインで高値で出回っている。
夏休みと本格的な経済再開を前に、今後さらに高価格となりそうなのが、レンタカーである。
パンデミックで業界各社は多くの保有自動車を売却したが、その後に半導体不足が起こり、思うように車の供給ができていない。すでに人気の観光地では予約が取りにくい状態だ。
たとえばハワイでは、予約の難しいレンタカーが取れたとしても、相当の価格を覚悟しなくてはならない。
試しに来週末のホノルル空港で探してみたところ、多くが1日200ドル以上、最も安い5人乗りのコンパクトタイプで162ドル、税金を入れて199.51ドル(2万2000円ほど)だった。実際はこれに保険やガソリン代が加わる。
12日間で3000ドル(33万円)支払った人が話題になったが、それもうなずける価格設定だ。
あまりに予約が大変になってきたため、U-haul(ユーホール)というトラックをレンタルする強者たちも登場している。
5人乗りのコンパクトカーより、ピックアップトラックやバンを借りた方がよっぽど安くつくのである。
例年以上の出費はこれだけではない。
飛行機に乗る72時間前までにコロナのテストをしなくてはならない。場所にもよるが、検査はアメリカで200ドル(2万2000円)くらいかかる。旅行や移動も一苦労だ。
家計を直撃している物価の上昇だが、アメリカ政府は一時的なもので、いずれ落ち着くという見方をしている。日本も、コロナ状況が落ち着くと、物価高騰が待っているかもしれない。
(取材・文/白戸京子)