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協力金支給率、東京3割弱なのに埼玉は9割超え…飲食店が喜ぶ「埼玉方式」とは?

社会・政治 投稿日:2021.06.17 17:00FLASH編集部

協力金支給率、東京3割弱なのに埼玉は9割超え…飲食店が喜ぶ「埼玉方式」とは?

 

 緊急事態宣言・まん延防止等重点措置による、営業時間の短縮と酒類提供の自粛要請に応じた飲食店には協力金が支払われるが、一部では遅れが生じているようだ。

 

 東京・中野区にある居酒屋の店主がこう嘆く。

 

「3月8日~3月31日の要請期間分の申請が4月30日から始まったので、5月7日に申請したけど、入金があったのは6月初旬。とにかく遅い。キャッシュフローがなければ、店舗の家賃や従業員の給料を考えるとやっていけないので、本当に厳しい。

 

 

 4月1日~4月11日までの要請期間分の申請は5月31日に始まり、6月4日には申請したけれど、入金はまだ。すぐに申請できないから、そのぶん苦しくなる。なんで飲食店だけって思いますよ」

 

 同区内の別の居酒屋の店主はこう話す。

 

「アクリル板を設置して換気や消毒にも最大限気をつけて、20時閉店で酒類も提供せず、全面的に協力してきた。でも、協力金の入金が遅いから経営が厳しい。

 

 さすがにもうギリギリでやっていけないので、20時以降も営業して酒類を提供しようかと考えている。真面目にやっている人が損をしていると思う」

 

 東京都の協力金の支給率(4月1日~4月11日の要請期間)は、わずか29%(6月11日朝9時時点、東京都産業労働局HPより)。ところが、この支給率が非常に高いのが埼玉県である。

 

「4月1日~4月19日の要請期間についての協力金の支給率は、おおむね93%です。4月20日~5月11日の支給率は、まだ40%ぐらいです(6月7日現在)」と話すのは、埼玉県産業労働部経済対策担当者。

 

 東京都が4月1日~11日までの要請期間の協力金の受付が5月31日から始まったのに対し(申請は6月30日まで)、同時期に支払いがおおむね終わっていることになる。なぜ、埼玉県はこんなに支給が早いのか。

 

「埼玉県の支給が早いかどうかは自己評価できないところはありますが、大きな理由は3つあると思います。

 

 1つめは、埼玉県では要請期間が空けた翌日から申請の受け付けを開始しています。たとえば4月1日~11日までの場合、4月12日から受付を開始しています。直近では、5月31日までの要請期間の受付は、6月1日から開始しています。

 

 理由としては、早く受付を開始すれば、それだけ早く審査に取りかかれ、早く支給できるからです。受付開始が遅くなればなるほど、支給も遅くなっていきますから。

 

 要請終了後に速やかに申請できるよう、期間が決まり次第、申請の案内を飲食店にお送りしています。内容も少し変わったりしますので、システム開発も同時進行でおこなっています。

 

 2つめは、電子申請を簡略化しています。電子申請をしていただいた方に対しては、ご本人のお名前や身分など、一部の入力項目は省略するようにしています。これは、申請する事業者側も、審査する側も早く手続きできるように、ということです。

 

 3つめは、臨機応変な人員配置です。やはり、初日は非常に多くの方が申請されますので、それをいかに早く審査できるかがひとつの大きな柱になっています。

 

 なかなか職員だけでは審査できないため、委託という形で協力いただいている部分もありますが、窓口を手厚くするなど適切な配置をすることで、なるべく滞らないように進めています」(担当者)

 

 埼玉県ではこういった柔軟な対応をすることで、他府県に比べ、非常に早い支給を可能にしているわけだ。

 

 ここまでは、申請された案件をいかに迅速に審査し支給の確定まで進めるかという話だが、支給をいかに早くするかについてはどうだろうか。

 

「これは行政内部の話になりますが、県や官公庁はお金を支払うのに、『中3日』というルールがあるのです。それで、財務処理してから、相手の口座に入るまでちょっと時間がかかったりします。

 

 今回は『緊急払い』という、本当に特殊なときに使うルールを適用していまして、これは『中1日』で処理できます。それだけでも約2日間、相手の口座に早く届きますよね。

 

 もちろん公金ですので、さまざまなチェックが入ってからお金は支払われますが、複数の行程を同時進行して、中1日で払えるようにしています。

 

 申請者の手から離れた時点で行政の責任だととらえ、できるだけ迅速に進めるため、審査と支給を切り分けて対応しています。支給が早いという評価をいただけているのであれば、そういうことが複合的に重なっているのだと思います。

 

 協力していただいていることに対してお支払いするのは当然のことなので、これからも1日も早い支給を続けていきたいですね」(同)

 

 実際に、支給される側はどのように感じているのだろうか。さいたま市内のお好み焼き屋店主は「協力金の支給が早くて本当に助かっている」と話したうえで、こう続ける。

 

「今年に入ってからの協力金の入金は、3月31日、4月21日、4月27日、5月21日、5月27日と5回ありました。だいたい申請から10日後には入金されていて助かります。

 

 協力金は時短営業と酒類を提供しないことで1日4万円、掛ける日数分。うちはアルバイトが3人だけなので、十分まかなえます。しかも支給が早いから、資金がショートしないで済んでいます。

 

 この近くで居酒屋を経営している仲間たちも、みんな助かっていると話していて、おかげで余裕をもって店を休めると。

 

 ちゃんと埼玉県から、何月何日~何月何日分の第何期の申請はいつからいつまでだと、郵送で送られてくるんです。申請書の書き方の見本もついているから、記入漏れもない。パソコンができない知り合いの居酒屋店主は、それが助かると話してました。

 

 うちなんかは団体客がメインだし、お酒が飲めないとなかなかお客さんも来ないから、売上は前年の半分以下。

 

 どれぐらいでお客さんが元に戻るか、見当がつかないのは不安ですが、東京都は支給が遅くて店がもたないなんていうニュースをよくやっているから、それに比べるといいほうかもしれません。ありがたいなって思いますよ」

 

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されても、飲食店での時短や酒類提供の自粛要請は続くと見られている。先行きが見えないなか、要請に従わない飲食店も増えている。「埼玉方式」で、一日も早い協力金の支給が進めば、感染拡大防止にも役立つはずだ。

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