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住宅が高騰するアメリカで、ついに海中の土地が売り出される

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.07.18 19:00 最終更新日:2022.12.07 15:29

住宅が高騰するアメリカで、ついに海中の土地が売り出される

桟橋の両側が売地

 

 アメリカの住宅価格が、高騰し続けている。

 

 増える人口に対して住宅の供給が追いついておらず、もともと上昇傾向だったところに、パンデミックによる在宅勤務の増加、さらに歴史的な低金利などが加わって、価格上昇が激しくなっている。

 

 

 サンフランシスコは全米でも住宅が高くて有名である。6月の一戸建て売買の平均価格は2.7億円、1年前より8.2%上昇した。地元の人はこの様子を “クレイジー” と表現している。

 

 そんななか、住宅40戸分の広大な土地5.7エーカー(およそ2万3000平方メートル)が売りに出されたが、価格はわずか8500ドル(94万円弱)と破格である。

 

 さっそくその住所へ行ってみた。目前には広大なサンフランシスコ湾が広がっている。土地は、水の中だった。

 

 売り手のトレント・ジュさんに話を聞いた。

 

「この土地は数年前に市のオークションで競り落としたもので、当時は5000ドル(約55万円)でした。

 

 6年前まですぐ脇には『キャンドルスティック・パーク』というスタジアムがありました。NFLのサンフランシスコ49ers(フォーティーナイナーズ)が本拠地としていた世界的にも有名な場所です。

 

 現在はここにサンフランスシスコ市最大の再開発事業が予定されていて、商業施設やオフィス、2000戸を超える住宅が建設される、将来有望な土地なんです」

 

 湾に面した一帯がまるで日本のお台場のように、さまざまな人で賑わう場所になる予定だ。ただし、その計画が遅れに遅れている。

 

 ジュさんの元にはすでに何件か問い合わせが来ているが、できればすべての土地をまとめて売りたいため、現在保留にしている状態だと言う。

 

 このエリアに詳しい不動産業者の荻原望さんに話を聞いた。

 

「この土地は市のゾーニングで “住宅” か “重工業の工場地” となっています。もし、この場所にホテルやレストランを建設するとなると、市などにかけあってゾーニングを変更する必要があります。

 

 またこのあたりはベイビュー地区という市内でも有数の治安が悪いエリアです。再開発が進むまで、治安面での不安もあります」

 

 水の中の土地でも、自分が住宅を建てて生活するぶんにはゾーニングを変更する必要はない。土地は浅瀬で水底が見えている。サンフランシスコ湾の平均水深は4.2メートルだそうだ。

 

 アメリカの住宅は個人売買が普通なので、時折こうした面白い不動産や奇をてらった物件が出回る。

 

 望さんも最近、アルカトラズの刑務所をイメージした牢獄風の家を担当したという。地下の2部屋に格子が取り付けられ、なかには二段ベッドが配置されていた。オーナーは日本人だったそうだ。

 

 サンフランシスコの陸上では、2億円を超える物件が平均18日で次々と売れてしまう忙しさだという。

 

 だが、広い湾を目の前に、毎日魚釣りを楽しめる5.7エーカーの水上コテージを楽しもうという人は、今のところまだ出てきていないようである。(取材・文/白戸京子)

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