社会・政治
東京五輪の舞台「国立競技場」完成までの軌跡1137日完全密着
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.07.22 06:00 最終更新日:2021.07.22 06:00
■特等席から眺めるスタジアムの誕生
国立競技場に対面する河出書房新社の7階建てビル。 その屋上に設置された一眼レフカメラは、2016年10月から2019年11月までの1137日間、24時間、定点撮影を続けた。
着工から完成までをまとめた写真集『国立競技場 Construction』(河出書房新社刊)の定点カメラを担当した共同通信社写真部の武隈周防さんが述懐する。
【関連記事:配管むき出しトイレ少なすぎ「新国立競技場」これで工事費1569億円】
「新しいスタジアムが出来上がる様子を定点で撮ったらおもしろいだろうという雑談ベースの話から、プロジェクトがスタートしました。
撮影場所が決まったあとの課題は、カメラの電源の確保、カメラのハウジング(箱)、データの回収の3点。河出書房新社さんのご協力により、電源とデータ回収はクリアして、箱については、雨、風、雪、台風に耐えうる屈強なものを業者に作ってもらいました」
1964年の東京五輪のメイン会場として使用された旧国立競技場は、2015年10月に解体工事が完了し、2016年12月から新しい国立競技場の建設が始まった。工期は36カ月。約6万人を収容(オリンピック時)する地上5階、地下2階の大プロジェクトである。
地盤整備から、基礎構築、スタンド建設、屋根の架構、フィールド整備、内装外装、外構整備など、作業員は1日最大2700人。完成までに延べ150万人を動員した。
定点撮影のための準備が整い、2016年10月20日午後1時5分、撮影が始まった。
「最初に記録したのは、東京の真ん中にぽっかりとできた空き地でした。カメラは、10分にワンカットのインターバル撮影で、1日に144枚。チームを組んで1カ月おきにデータを回収しました。最初に写真を確認したとき、ホッとしました。カメラは精密機器なので、いつ、何が起きてもおかしくない。でもその心配は杞憂に終わりました。たまに、カラスが何枚かに写り込んでいましたが(笑)」
3年あまりの定点撮影は、共同通信社でも初の試みだったという。
「更地の状態から完成まで、淡々と記録した写真集ですが、建設に携わった方々の息遣いや、そのときの世相など、重ね合わせながら見てもらえると嬉しいです」
【東京・千駄ヶ谷の河出書房新社ビルの屋上から定点撮影】
明治神宮外苑にある。「神宮の杜」と呼ばれるように、東京都内でも緑地の多い自然景観の美しい立地。敷地は約10万9800m2、東西の高低差は約8m
地震荷重については、建築基準法で定める「きわめて稀に発生する地震〈レベル2〉」の1.25倍の規模を想定し、これに耐えうる設計にした
屋根の工事は、地組みしたユニットをフィールド部分に配置したクレーンで吊り上げ、隣り合うユニットを高力ボルトで接合するという作業の繰り返しだ
内外装の仕上げ工事が続くなか、2019年2月、フィールド工事が始まった。工事はいよいよ最終段階。スタジアムの全容が姿を現わし、外観が明らかになった
写真・共同通信社
(週刊FLASH 2021年7月27日・8月3日号)