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ビル・ゲイツもイーロン・マスクも…世界の大富豪「原子力」に積極投資始める
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.07.27 18:00 最終更新日:2021.07.27 18:00
テスラやスペースXの創業者であるイーロン・マスク氏が、先週、原子力エネルギーに好意的な発言をした。
テスラ社は電気自動車のほかにソーラーパネルの販売もしており、今月、同社のソーラーシステムを備えた大規模な街をテキサス州オースティンに作ると発表したばかり。
5月には、消費電力が大きく環境への負荷が高いとして、ビットコインの取り扱いを中止するなど、マスク氏は地球環境に配慮した姿勢を見せている。
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7月21日に開かれたカンファレンスに登壇したマスク氏は、「原子力エネルギーは人々が考えているより安全だと思う」「ものすごく安全な原子力発電を作ることは可能だと思う」などと発言した。
マスク氏は2007年に公共放送PBSのインタビューで、石油燃料や天然ガスを燃やすより、環境への負荷が少ない原子力発電所をもっと建設すべきだとの考えを示している。
欧米では稼働している原子力発電所が少ないため、「脱原子力」へ向かっているイメージがあるが、実際には新たな技術の模索が続いている。“脱炭素” の視点から、地球温暖化物質を排出しない原子力はクリーン・エネルギーと捉えられているのだ。
実際、世界の名だたる大富豪たちは、原子力の研究に巨額の投資をしている。
ビル・ゲイツ氏とウォーレン・バッフェット氏は、次世代原子炉を開発するテラパワー社に出資している。ゲイツ氏が会長となっている同社は、安全性が高いとされるナトリウム冷却高速炉をワイオミング州に建設すると発表している。
また、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏はカナダのジェネラルフュージョン社に投資済みだ。こちらはイギリス政府の出資を受け、実証プラントを建設することを先月公表している。簡単に言えば、プラントの中で太陽のような発電を目指す技術だ。
また、温室効果ガス削減のため、大富豪たち30名近くが出資しているファンドがある。ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズという名前で、出資者はゲイツ氏やベゾス氏のほか、リチャード・ブランソン氏、ジャック・マー氏、孫正義氏、マイケル・ブルームバーグ氏などそうそうたる顔ぶれだ。
また中国も原子力開発を加速させており、2030年をめどに、冷却装置が不要なトリウム溶融塩炉を建設する計画だ。さらに「一帯一路」構想の参加国30カ所ほどに輸出していく可能性がある。
こうした世界の流れを見ると、次世代エネルギーとして新たな原子力技術が有力視されていることがわかる。
一方、日本の経済産業省は、2030年の電源比率素案を公表し、火力発電を大幅に引き下げる一方、原子力発電はほぼ現行どおりだとしている。世界の動きに、日本のエネルギー政策は追いついていないようにも見える。
今回、イーロン・マスク氏は、どうやって安全な原子力発電をするのか具体的には話さなかったが、新原子力発電で世の中を変えていく用意があるのは間違いない。(取材・文/白戸京子)
写真:AFP/アフロ