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楽天・三木谷会長も出資する「光免疫療法」ピンポイントでガンを破壊

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.08.15 11:00 最終更新日:2021.08.15 11:00

楽天・三木谷会長も出資する「光免疫療法」ピンポイントでガンを破壊

光免疫療法/ガンにレーザー照射する様子

 

「光免疫療法は、ガンの『第5の治療法』と呼ばれていますが、ゆくゆくは最初におこなわれる『第1の治療法』にすることを目指しています」

 

 そう話すのは米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆氏(59)。現在のガン治療は(1)患部を切除する外科手術、(2)放射線、(3)抗ガン剤が “3本柱” で、4番めが、「オプジーボ」などの薬剤により免疫の働きを高めるガン免疫療法。

 

 

 5番めとなる光免疫療法は、2020年9月に承認され、2021年1月20日に国立がん研究センター東病院で、世界で初めて施術がおこなわれた。

 

 どんな治療法なのか。

 

「光に反応する色素をつけた抗体を患者に点滴で投与します。抗体はガン細胞の表面にくっつくので、そこに近赤外線のレーザー光を当てると、色素が化学反応を起こし、ガン細胞を壊します。奥深い場所の場合は光ファイバーを腫瘍に挿入し、光を当てます」

 

 これまでの治療法とのいちばんの違いは、「ガン細胞のみを狙い撃ちできること」。放射線科医として勤務していた小林氏が、ガン患者の苦しむ姿を見てきたことが、この研究開発の出発点だという。

 

「抗ガン剤は全身にまわるので、正常な細胞も傷つきますし、放射線はガン細胞ではない部分にも当たり、正常な細胞も弱って免疫力が下がってしまいます。そんな患者さんの姿を見てきて、ガン細胞だけを叩く方法はないかと模索してきました。

 

 光免疫療法は光でガン細胞のみを狙い撃ちし、正常な細胞は残して体力を温存できる。ガンを叩いて、さらに免疫で抑え込む二段構えの治療なんです」

 

■すべての部位のガンで保険適用を目指す

 

 小林氏の研究を支援してきたのが、楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏(56)だ。

 

「神戸に住む従兄弟の紹介で2013年に初めてお会いしました。膵臓ガンを患っているお父様のために治療法を探されていて、私の研究に興味を持ってくださり、すぐに臨床治験などを私費で支援していただきました。治験にはお金がかかりますから、三木谷さんにご理解いただけたことは、とても大きかったです」

 

 光免疫療法の排他的ライセンスは楽天メディカルが持ち、『イルミノックス』という名前で商標登録している。現在は18の医療機関で治療がおこなわれている。

 

 今のところ保険適用となるのは頭頸部ガンのみで、ほかに治療の選択肢がない場合に限られるが、期待は大きい。

 

「食道ガンでも治験が始まり、子宮頸ガン、乳ガンにも使える可能性が高い。この治療は免疫力が正常なうちにおこなってこそ100%の力が発揮されるので、第1の選択肢にしたい。この治療のあとにほかの治療も可能なので、患者にデメリットはないんです」

 

 さらにコストも安い。

 

「放射線治療の設備には数億円もかかりますが、光免疫療法のレーザー装置は数百万円程度なので、治療費を抑えられます(手術費は部位などにより異なるが、保険と高額療養費制度を利用すれば10数万円ほど)。あらゆるガン患者にとっての選択肢となるよう、全力を尽くします」

 

 光免疫療法が、世界中のガン患者の救世主になることを祈りたい。

 

こばやしひさたか 
1961年兵庫県生まれ 京都大学医学部卒業後、京都大学大学院内科系核医学を専攻し修了、医学博士号取得。現在はNIH/NCI(米国立衛生研究所・国立がん研究所)勤務。著書は『がんを瞬時に破壊する光免疫療法』(光文社新書)など

 

写真提供:東京医科大学病院 塚原清彰氏
資料提供:関西医科大学HP・楽天メディカルジャパンHP

 

(週刊FLASH 2021年8月10日号)

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