海水浴場でもしばしば見かけるようになった水上バイク。真夏の海を颯爽と駆け抜ける姿は楽しそうに見える反面、近くで人が泳いでいたらどうなるのかと恐怖も感じる。
その起こってほしくない危険な事態が、兵庫県明石市の海岸で7月から8月にかけて頻発していた。シュノーケリングで潜っている人やパドリングしている人のすぐそばを暴走する水上バイク。その様子を撮影した映像がニュースで流れ、波紋を呼んだのだ。
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これを看過できないと捉えた明石市の泉房穂市長は、8月10日、海上保安庁に対し、危険運転をおこなった複数人を兵庫県の条例違反と殺人未遂の容疑で刑事告発した。
事故は起きていないものの、「人が死んでからでは遅い」と憤る泉市長は、本誌に思いをぶちまけた。
「海の上は完全に無法地帯でやりたい放題。スピード違反はないし、ちょっと飲んで酔っても運転できる。かつての飲酒運転、あおり運転と一緒の状況です。条例で一部規制はありますが、たかだか罰金5万、10万の世界。
問題点は3つ。まずはこの法の未整備。
次に、取り締まり体制がないこと。海は白バイもないから捕まえられないんです。実際、一般人が通報して、海上保安庁が来たときにはもう逃げられていた。海上保安庁の船なんてとろくて、水上バイクのほうが速いから。最初、私も警察に行くか、海上保安庁に行くか迷ってたんです。両者ともどうしていいかわからないから当事者意識がない。結局、海上保安庁で対処することになり、告発に行ったんです。
3つめは業界の問題。水上バイクの製造は、カワサキ、ヤマハ、ボンバルディアの寡占状態なんです。とにかくメーカーは売りまくりたい。GPSやドライブレコーダーをつければ、あとから犯人を特定できるので危険運転抑止になりますが、メーカーはそんなことをしようとはしない。免許だって誰でもすぐに取れるんです。
結局、抑止力が重要なんです。私が告訴してから、危険運転はピタッと見られなくなりました。明石の海で危険なことをしたら、また市長のあいつが何するかわからんとビビってるんです。
私は水上バイクで走るなと言っているんじゃなくて、安全に楽しんで乗ってもらえればいいんです。一部の心なき無法者の危険行為だけが悪く、それでみんなが迷惑をこうむっているだけ。国は人が死んでセンセーショナルにならんと動かん、ワシが死ぬ前にやれよと。マスコミもちゃんと書かなあかんよ!」
明石から日本が動き出すか。