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品川区の一戸建ても簡単に崩壊…戦前の盛り土、地下2メートルまで地下水が迫る
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.08.22 06:00 最終更新日:2021.08.22 06:00
「2004年、東京・西品川で、腹付け型盛り土の擁壁が倒壊し、住宅が数棟崩れ落ちました。前日からの小雨と、擁壁の下でのショベルカーによる工事の振動が原因と思われますが、擁壁そのものにはなんの作業もおこなわれていませんでした。そもそも、擁壁の安全性に根本的な問題があったと考えられます」(京都大学防災研究所の釜井教授)
ネットで「重ねるハザードマップ」を見れば、どこが大規模盛土造成地なのかは把握できる。しかし、マップに未掲載の盛り土も多く存在する。昭和20年以前に造成された “戦前もの” の盛り土がそれだ。
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「西品川の崖崩れも、コンクリートと大谷石(おおやいし)が継ぎ足されていたことから考えて、おそらく古い盛り土だったのだろうと思います」(同前)
阪神・淡路大震災や新潟県中越地震でも、盛り土が崩落して多くの被害が発生した。このことから、国土交通省は全国の自治体に大規模盛土造成地の分布マップを作製し、公表することを要求。2020年にいちおうの完了を見た。
しかし、戦前に造成された盛り土は調査が進んでおらず、全国でも東京都や仙台市などわずかな自治体が「調査を継続中」との断わりをつけ、HPにてひっそりと公開しているのみだ。
「昭和37年以降に造成された盛り土は排水管を通し、地中に地下水が溜まらないようにしていますが、それ以前の盛り土はそもそも排水管がないものが多いのです。さらに、戦前の宅地造成には法規制はありませんでしたから、ある高級住宅地を造成した際の当時の写真を見ると、トロッコで土砂を運んできて、田んぼにドサッとかぶせていくような、現在から見れば杜撰な手法が取られていました」(同前)
とはいえ、そうした “戦前もの” の盛り土が造られてから76年以上がたっており、その間に何も事故がなかったのであれば、もはや心配いらないのではないのか。
「その考えは甘いです。戦前に造成された盛り土は、ほぼすべてが関東大震災以降のもので、大きな力が加わったことがありません。それに私が数年前、都内のある古い盛り土をボーリング調査したところ、地表面下2mのところまで地下水が迫っていました。盛り土の中は地下水がタプタプに溜まっており、ちょっとしたきっかけが原因で崩れてしまう可能性は大きいと思いました」
次の地震や豪雨がきっかけで、忘れられた盛り土が崩れ始める――。そんな場所で、我々は日々生活を送っているのだ。
写真・梅基展央 取材/文・鈴木隆祐
(週刊FLASH 2021年8月31日号)