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偽札10億円作った男、実際に使ったのは24万円/9月4日の話
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.09.04 06:00 最終更新日:2021.09.04 06:00
1982年9月4日、大分県大分市の不燃物投機場から、大量の偽5000円札が発見された。34個の麻袋に詰められた偽札は、失敗作も含め総額10億円以上と、当時としては過去最大だったという。
前年から関西に出回っており、「リ-18号」と名づけられた偽札と一致したことから、大分県警が一気に動き出す。ほどなくして、印刷会社の社長らが検挙された。使われたのは48枚、24万円分だった。
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歴史学者の濱田浩一郎さんが、こう語る。
「主犯格だった印刷会社の社長は31歳の若さでした。もともと野心があり、27歳のときに会社のビルを建てています。しかし、不況に押されて借金がのしかかってきたタイミングで、別の偽札事件の話を知り、従業員とともに偽札犯罪に手を染めたのです。
リ-18号事件前には、1962年にチ-37号事件という、非常に精巧な偽1000円札が発見されていました。秋田県にある日本銀行秋田支店で、廃棄予定の紙幣から出てきたのです。本物と並べなければ、まず判別は不可能とされ、『世紀の贋札』と呼ばれました。
リ-18号事件で発見された偽札は、技術面ではチ-37号事件に迫るものと言われ、しかも量は史上最大でしたから、非常に大きな偽札事件だったといえるでしょう」
偽札事件の名前のつけ方は独特だ。1万円札は和(ワ)、5000円札は利(リ)、1000円札が千(チ)、現在は製造されていない500円札は葉(ハ)と決められている。現在の福沢諭吉の1万円札の場合は、「和D」となる。
言葉には特に意味がなく、イロハ文字のなかから、発音がまぎらわしくないものを選んでいる。後に続く数字は、発見された順番に従ってつけられる。
現代でも、偽札はたびたび発見されている。警視庁の記録によれば、2019年には2887枚、2020年には2693枚の偽札が押収された。最も多かった2000年代は、1年で2万5000枚以上も発見されたというから、ずいぶん少なくなったといえる。
2024年度には、各種紙幣デザインが一新される。最大の目的は偽造などの犯罪防止だ。先日も、偽の聖徳太子の旧1万円札が都内で出回ったと報じられており、偽札の完全撲滅には時間がかかりそうだ。