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「ワクチンには有効期限がある」感染症学の権威・岩田健太郎教授が提唱するゼロ・コロナ作戦

社会・政治 投稿日:2021.09.15 12:22FLASH編集部

「ワクチンには有効期限がある」感染症学の権威・岩田健太郎教授が提唱するゼロ・コロナ作戦

 

「いまの行政は中央も地方も正しく現状を認識できていません。典型が沖縄です。感染対策はしっかり取りたいが、観光客も呼び込みたいという矛盾したことをやり、悲惨な状態になりました。

 

 科学的な根拠を無視して、国民を気分よくさせるためだけの政策をやってしまうと、いちばん困るのは我々、国民なんです。

 

 日本はいま、感染の第5波がきていますが、同じしくじりを繰り返しているから何度も波がやってきているわけです。しかも波は来るたびに大きくなっている。日本の政治家と官僚は、その場しのぎの対応しかできていない。

 

 当然、その先を見据えてた上で、政策というものは打たなければなりません。少なくともこれまでは、波を起こさせないという政策を一度も取れていません」

 

 

 こう話すのは、日本を代表する感染症学者である岩田健太郎神戸大学医学部教授だ。

 

 政府はワクチン接種が進んだことを受け、段階的に行動制限を緩和する基本方針案をまとめたが、岩田教授はこれまでの政策の失敗と感染爆発を踏まえ、このたびの政府方針にも懐疑的だ。

 

「いま、イギリスでは行動制限をすごく緩めています。サッカーのリーグ戦では、満員の会場でマスクもつけずに大騒ぎしています。

 

 緩和策をとった結果、連日、感染者は3万人近く、死者は100人~200人に上るという、非常に厳しい事態に陥っています。イギリスではワクチンを2回接種した人が成人の80%を超えているにもかかわらずです。

 

 日本では、2回接種を受けた人は国民の5割を超えた程度。この段階でイギリスと同じことはさすがにできません。

 

 スポーツ観戦の場合、Jリーグでは今までに感染が起きていないという実績はありますが、それはデルタ株の流行以前の話。いまはもう一度見直す必要があると思います。大人数で騒ぐ、宴会をするなどは言語道断です」(岩田教授、以下同)

 

 とはいえ、一定のレベルでなら、制限緩和をおこなってもいいと話す。

 

「旅行については、事前のPCR検査を義務化し、ある程度の安全性を担保した形でなら緩和は可能だと思います。飲食店の利用も、僕は以前から1人だけなら問題ないと考えていました。同居の家族2人と夜遅くまでというのも構わないと思います」

 

 パンデミックを抑える目的においてよく語られるのが、「ゼロ・コロナ」か「ウィズ・コロナ」かという論点だ。世界全体で考えると「ゼロ・コロナ」は厳しいが、地域レベルなら「ゼロ・コロナ」は可能だという。

 

「パンデミックを抑えるのはものすごく大きなミッションなので、簡単にはできません。ただ、地域レベルであれば、『ゼロ・コロナ』はもっとも簡単なコロナ克服法です。

 

 地球規模で考えると、どんなミッションでも難しい。

 

 たとえば戦争をゼロにするのは、世界レベルで考えると残念ながら困難ですが、日本で戦争が起きないようにすることはある程度できると思います。

 

 コロナも同じで、世界中からコロナをなくすことは数十年規模で取り組んでやっと実現できるか、それでも不可能かもしれません。ですが、日本という小さな島国でコロナをゼロにすることは、現実的なミッションだと思います。

 

 ときどき海外から持ち込まれても、さっと抑え込む。いまのニュージーランドのような状態にするのは、プランとしては可能だと思います」

 

 だが、そのためにはやるべき課題は山積みだ。目下進められているワクチン接種はもちろん重要だが、それだけでは不十分だという。

 

「すべての問題にはマルチレイヤー(複合的)な対策が必要で、完璧なシングルアンサーはない。コロナ対策も同様で、ワクチンさえ接種しておけば大丈夫という考え方では絶対に失敗します。もちろん、緊急事態宣言だけでも失敗します。

 

 あらゆる課題はたくさんの対策を複合的に使って、なんとかゆっくり解決に向かっていくものであって、これさえあれば十分という方法はありません。まさにコロナがそれだと、誰もがわかっているはずです」

 

 実際、ワクチン2回接種後に感染する、ブレークスルー感染という現象も見られている。デルタ株、ミュー株に次ぐ変異株が出てきた場合、ワクチンは効かなくなるのだろうか。

 

「今のところ、2回のワクチンが効かない株というのは存在しません。ただ、これは未来を保証するものではないので、今後、ワクチンが効かなくなる株が出てくる可能性は十分あると思います。

 

 ただ、ワクチン開発については方法論的には目処が立ったので、ワクチンが効かない変異株が出たら、新しいワクチンを作ればいいという話だと思います。複数の株に対する混合ワクチンなども開発されるはずです。インフルエンザのワクチンのような。

 

 とはいえ、ワクチンでできた抗体にはおそらく有効期限が存在します。いつワクチンを接種したから、いつまで効果が続くと示すようなワクチンパスポートが必要になってくるかもしれません。とにかくワクチンだけですべてが解決することはないのです」

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