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ゴジラやモスラも登場…米空軍の切り札「プロジェクト怪獣」の全貌
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.09.24 11:00 最終更新日:2021.09.24 11:00
アメリカ空軍が中長期的な「電子戦」戦略を発表した。人工知能を活用して、より先鋭的な電子戦を目指すものだが、その名前が「プロジェクト怪獣」なのだ。公表された文書には、ゴジラやモスラ、ガメラまで登場している。
はたして、「プロジェクト怪獣」とはどのようなものなのか、軍事ジャーナリストの菊池雅之氏に話を聞いた。
「電子戦は、現代から未来の戦争においてとても重要になっており、アメリカを筆頭に、各国がどのように電子戦を勝ち抜くか模索している段階です。
電子戦とは、簡単に言うと、敵の無線を傍受したり、妨害するということです。たとえば、ミサイルは基本的に『電波』で誘導するものですが、逆に言えば、その電波を狂わせれば標的に当たることがない。
アメリカはいま、 人が操作しなくても『こういう電波が飛んできたらこう対処する』みたいなことを、機械に覚えさせようとしています。このように、人工知能や機械学習を電子戦に取り込む計画が『プロジェクト怪獣』なんです」
この計画が実現すれば、電子戦に膨大な人員を動員する必要がなくなり、人的コストや時間的コストが大幅に削減できる。
「これまで、水平線の向こうにいる敵と戦うのって、すごく難しかったんです。どうしてかというと、地球は丸いですが、レーダーは真っ直ぐにしか飛びません。照射したレーダー波は、飛距離に応じて、地表からどんどん離れてしまうんです。
でもいまは、遠く離れた味方とデータを共有したり、敵の動きを把握することができる。
たとえば軍艦が水平線の向こうにいる敵の軍艦や戦闘機、ミサイルと戦うにはどうしたらいいか。中継を担う戦闘機を空に飛ばし、その戦闘機を介せば敵を見つけられますよね。この場合、戦闘機を戦闘機として使うのではなく、『空飛ぶリモートセンサー』として使うわけです。
戦闘機である必要もなく、無人機でかまわない。無人のリモートセンサーを飛ばして、敵を見つけたら、その情報を味方と共有すればいいんです。
こうしたネットワークの連携などを、総じて『電子戦』と呼んでいます。従来、構築するまですごく人手が必要だったんですが、今後は人工知能に任せていくことになるでしょう」
「プロジェクト怪獣」には、以下のような電子戦タスクが組み込まれている。
●ゴジラ=プロジェクト全体のプログラム管理
●モスラ=敵の能力評価
●ガメラ=ビッグデータの収集
●キングギドラ=ハードウェアに依らない無線システムの検証
●メカロダン=電子戦のシミュレーション
●クモンガ=制限のある既存ソフトウェアの再設計
●キングコング=既存のハードウェアの組み込み検証
●バラゴン=複数の電子的脅威をリアルタイムで追跡
それにしても、なぜこのような怪獣名になったのか。菊池氏は、アメリカ防衛省に、ゴジラをはじめとするサブカル文化が流れ込んでいると語る。
「怪獣の名前にした理由は、映画『パシフィック・リム』が大きく影響していると思います。『パシフィック・リム』は、モンスターに対して地球連邦軍的な集団が巨大ロボットで地球を守るSF映画ですが、そこに出てくるモンスターは作中で『カイジュウ』と日本語で呼ばれています。
これは、日本の特撮映画やアニメで育った人たちが、社会の中核となって、意見が反映しやすくなっているのでしょう。それが『カイジュウ』に代表されていると思いますよ。
実際に米軍の演習などに行くと、ゴジラやキングコングなどのイラストをマークとして描いていたりする。アメリカ人のなかで『カイジュウ』は強さを象徴する “ヒーロー” に近い存在なのかもしれません。それで今回も『プロジェクト怪獣』という名前にしたのでしょう。
正直、いまの米軍には “厨二病” 的な発想が数多く見られます。9月21日には、新設されるアメリカ宇宙軍の制服が発表されましたが、まるで『スタートレック』のようです。ちなみに、宇宙軍で働く人たちは『ソルジャー』じゃなくて『ガーディアン』と呼びます。やはり、1980~90年代のSF映画から影響を受けた人たちが上層部にいるんでしょうね」
かつてスクリーンで暴れまくった怪獣たちが、アメリカの守護神となる日はそう遠くない。