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200億円の宇宙ステーション補給機を「漁業網」で壊す大実験!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.02.01 13:00 最終更新日:2017.02.01 13:29
2016年12月9日に打ち上げられた宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機は、水や食料といった物資を国際宇宙ステーション(ISS)に運び、2017年1月28日、ISSから分離された。
1機を製造するのに約200億円かかるといわれている「こうのとり」だが、今後はスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去実験のため大気圏に落とされ、燃え尽きる運命だ。
現在JAXA(宇宙航空研究開発機構)は増え続けるスペースデブリの除去に取り組んでいる。スペースデブリの正体は、過去に打ち上げられたロケットや人工衛星の残骸で、それらが秒速7kmで地球の周りをまわっている。
スペースデブリ同士がぶつかると破片が散らばり、どんどん数が増えていく。スペースデブリがISSなどにぶつかると最悪破壊され、安全な宇宙活動の妨げになる。
コストを抑えながらスペースデブリを除去するためにJAXAが採用したのは、日本の伝統的な漁網技術を駆使することだった。
アルミなどの金属で編み込んだ「導電性テザー」は全長約700m。対象となるスペースデブリに取り付けると、地球を周回しているうちに徐々に高度が下がる仕組みとなっている。最終的には大気圏に突入し、燃え尽きて除去できるのだ。
この「導電性テザー」をJAXAと共同開発したのは老舗漁網メーカーの「日東製網」だ。無結節網という結び目を作らない独自の編み方の製造機を世界で初めて造った。現在でも国内トップシェアを誇り、日本の漁業を支えている。
10年以上かけて開発された「導電性テザー」を使い、「こうのとり」6号機が大気圏に落ちてくれば実験は成功である。しかし、一度はワイヤーの打ち出しに失敗、2月4日までに再チャレンジを試みる。
宇宙開発を支えるのが漁業技術だというのは意外だが、日本にはスペースデブリの除去に取り組むベンチャー企業も存在する。「アストロスケール」は、現在のところ世界唯一のスペースデブリ除去を目的とした会社だ。
Forbes JAPANが選ぶ「日本の起業家ランキング2017」で同社の岡田光信氏が8位に選ばれたことからも、高い評価を得ていることがわかる。
2010年にスペースシャトルでISSに行った宇宙飛行士の山崎直子氏も「15日間の滞在中に小さな破片がスペースシャトルの窓ガラスだけで3箇所は当たっている」とスペースデブリの危険性を指摘したことがあった。
はたして実験は成功するのか、注目である。