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北海道でウニ大量死…アメリカでは「ゾンビ・ウニ」で四苦八苦

社会・政治 投稿日:2021.10.07 11:00FLASH編集部

北海道でウニ大量死…アメリカでは「ゾンビ・ウニ」で四苦八苦

紫ウニ(写真:AP/アフロ)

 

 北海道でウニが大量死し、被害額は厚岸漁協だけで10億円、向こう3年分の稚ウニにも被害が出た。根室市などでも被害が出ているという。

 

 寿司好きにとってウニ不足は心配の種だが、一方で増えすぎたウニに困り、お手上げ状態の地域もある。

 

 アメリカ西海岸のカリフォルニア州からオレゴン州にかけての海岸では、紫ウニが大繁殖を続け、ケルプ(コンブ科の海藻)の森に大被害を与えている。ケルプを食べ尽くしたウニが紫のカーペットのように海底を覆う、非常に荒れた状態が600キロほど続いているそうだ。

 

 

 ラッコが生息する海岸線で、2012年に比べて95%もケルプが減った。2013年頃、天敵のヒトデが海水温の上昇により減少したことで増え続け、5年間で100倍になった。

 

 かつてこのエリアには希少価値の高い赤ウニが生息し、日本へも輸出されていたが、幻のウニは紫ウニに取って代わられた。ケルプの減少でアワビも激減し、アワビ漁は2017年に終了、少なくとも2026年まで再開しないとのことだ。

 

 ウニは食べ物がなくなっても同じ場所で数年間生きるため、地元の人は「ゾンビ・ウニ」と呼んでいる。ちなみにゾンビのように飢えた状態になると殻の中身が減ってスカスカになるため、食材としての価値も下がってしまう。

 

 2020年、商用としてのウニの水揚げはかつての12%ほどまで落ちこんだが、そもそも、このエリアでウニを食べる習慣はない。ウニを食用として仕入れているのはイタリア料理か和食店くらいである。その和食店でさえ、寿司ネタとしてはバフンウニが好まれ、紫ウニはあまり人気がない。

 

 実際、今回2件の寿司屋に問い合わせたが、いずれもカリフォルニアの紫ウニはネタとして仕入れていなかった。時期にもよるが、あまり質がよくないとのことだった。

 

 ウニ問題の取材のために漁のライセンスを買ってウニを捕獲し、料理して食べた記者がいたが、アンモニア臭いなど好意的な記事ではなかった。アメリカ人が好む味ではないのだろう。

 

 地元では、ケルプの森を復活させるため、ウニ捕獲の努力が続けられている。モントレーでは100人以上のダイバーがウニを捕獲し、ハンマーでたたいて処分した。地元の環境団体もウニを捕獲し、堆肥にしたという。

 

 だが、こうした対応では、数百キロにわたる「ゾンビ・ウニ」問題はなかなか解決できない。そこで、ウニを処分するのではなく、生息エリアに餌をまいて中身を増やす試みをしている団体もある。こうした活動が実を結べば食用需要が増える可能性もある。

 

「ゾンビ・ウニ」問題を解決できるのは日本人かもしれない。(取材・文/白戸京子)

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