●「あの…懇願します。僕のプロフィールを出さないでほしい」
――失礼しました。手紙を読んでいただけたでしょうか?
「あの……懇願します。僕のプロフィールを出さないでほしいと懇願します。これは報道されるのでしょうか?」
――そのつもりで取材をしております。インタビューを受けていただけないでしょうか?
「いただいた手紙と取材への対応については弁護士と協議します」
――訴訟の原告代理人である米山隆一氏からも、吉田さん(仮名)が自称している「プロフィールは虚偽の可能性が高い」という指摘が出ています。反論はされないのですか。
「米山氏のインタビューは読みました。事実誤認です」
――どのあたりが?
「(根拠を述べず)事実誤認です」
吉田氏は「弁護士と相談し、取材を受けるかどうかについてはこちらから連絡するようにします」と話し、電話でのやり取りは終わった。
続けて、携帯電話のショートメールでもやり取りをおこない、吉田氏からは「個人情報さえ配慮していただけるのであれば、できるだけの協力はしたい」という旨の返事があった。
そこから2週間は何も音沙汰がなかった。その間も「黒瀬深」は引き続き、精力的な発信をおこなっており、野党攻撃を繰り広げていた。
しかし、総選挙が終わった11月1日に冒頭の「引退宣言」が突如ツイートされたのだ。
吉田氏とあらためてショートメールでやり取りをおこなったが、インタビュー取材への登場に彼が応じることはなかった。
最後に本誌は「なぜ『黒瀬深』として活動をおこなおうと思われたのですか?」とだけ、吉田氏に尋ねた。
残念なことに、返ってきた回答は「記事掲載禁止の仮処分を申し立てました」というものだった。
代理人として吉田氏を提訴している米山弁護士は、こう話す。
「現在は非公開アカウントになっているので、正確な文言は確認できませんが、このアカウントは私が訴訟を提起した際には『言論には言論で対抗すべきで、訴訟に訴えるのはけしからん!』といった趣旨のツイートをしていたと記憶しています。
ところが、自分が報道されたり、言論で批判されるとなると記事掲載禁止の仮処分を申し立てるのは、自己矛盾そのものでしょう。
結局、このアカウントは、自身の経歴ばかりか、ツイートの中身も“張り子の虎”に過ぎなかったわけですが、このような人物の発言を複数の政治家や著名人が真に受けて、リツイートし、日本の言論界が少なからぬ影響を受けたことは嘆かわしい限りです。
この人物には、適正な司法プロセスに基づいて、自分のやったことの責任をきちんと取ってもらうつもりです」
吉田氏は、本誌への仮処分を申し立てる理由として、自らの「人格権」の保護を主張している。
匿名を隠れ蓑に、さまざまな人々の人格を攻撃してきた「黒瀬深」は、今初めて、己の罪の大きさに気づいたのかもしれない。
( SmartFLASH )