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「日本人はオミクロン株を過度に恐なくてよい」と京大准教授が断言するワケ「ウイルスは弱毒化に向かっていく」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.12.12 06:00 最終更新日:2021.12.12 06:00
「全世界を対象に禁止する」
南アフリカで感染拡大した新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」をめぐって、11月29日に岸田文雄首相(64)は予防措置として外国人の入国禁止を表明した。一方で、世界保健機関は、この入国禁止措置について「疫学的に理解困難」と指摘している。
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日本より早くオミクロン株の感染者が確認された、ドイツ・デュッセルドルフ在住の日本人女性はこう話す。
「ドイツ人は旅行が好きで、南アフリカへの渡航者も多い。まだ重症者はいないので恐れられてはいませんが、感染力が強いと報道される変異株への警戒は強まっています」
現在、ドイツではクリスマスマーケット入場への「ワクチン証明書」や「完治証明書」の提示義務といった、厳しい感染対策が敷かれている。
「ほかの欧州諸国に比べて、これまで感染被害は大きくなかったのですが、いよいよコロナの深刻さがわかってきたという雰囲気です」(同前)
再度、日本も対策を強化する必要があるのかー。
「いま変異株の水際対策が大きく報じられていますが、新型コロナウイルス発生直後の2020年1月とは、我々の状況が違うことを考えるべきです」
こう話すのはハーバード大学公衆衛生大学院で公衆衛生専門職修士を取得し、大阪医科大学大学院で医学博士を取得した産業医の辻洋志氏だ。
「まず、ワクチンや感染歴ですでに免疫を持っていること。次に、屋内の換気や空気清浄などの機器の導入が進んでいること。そして、日本人全体に “3密回避” や、リモートワークなどの行動が浸透したこと。コロナ後に得たこれらの “武器” はオミクロン株にも効果が見込めます。悲観的な考えで、変異株に対してパニックに陥る必要はありません」
辻氏は現状のオミクロン株の特徴について、こう話す。
「発表された見解では、オミクロン株は伝播性が高く、既存の免疫から逃れる『免疫逃避』も高いとみられます。これらの要素は感染者を大きく増やす要因となります。一方、政策決定の要となる重症化の度合いの高さに、まだ不明な点が多いので、今後注目していくべきです」
さらに踏み込んで「オミクロン株を過度に恐れる必要はない」と断言するのは、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授だ。
「そもそも、日本人は新型コロナに強かった。ただ、要因がBCGによるものなのか、旧型のコロナに感染していて交差免疫があったからなのか、新型コロナウイルスが2020年1月以前から日本に上陸していたからなのかはまだわかりません。
感染者数は緊急事態宣言に関係なく、上昇しては減少するを繰り返していました。感染しやすい人が一通り感染したら、自然に減少し、ウイルスが変異すると再上昇する状態が続いていたんです。そして現在、ほとんど感染者が出ていません。日本は一時的に集団免疫に近い状態になっています」
宮沢准教授は第4波のアルファ株、第5波のデルタ株と、変異によって感染流行が起こりつつも、ウイルスに “選択” が起きていたと話す。
「変異することで強毒化、弱毒化の両方に向かう可能性がありますが、弱毒化したウイルスのほうが宿主に感染に気づかれず、広がりやすい。弱毒化した変異ウイルスが選択され、集団中で優勢になるから、旧株より感染力が強く見える、ということが起きるのです」
ウイルスの選択の結果は、陽性者データに表われていたという。宮沢准教授が続ける。
「無症状者を対象にした『木下グループ』の民間検査の首都圏での陽性率は、今年7月に3%まで上がっていました。3%を東京都の人口、1400万人に当てはめると、42万人が感染していたことになります。だとすると、ピーク時には一日3万人ほどの陽性者が出ていたはず。しかし、検査希望者の多くに症状がみられる都の検査発表では、一日3000人~5000人の陽性者でした。
つまり、実際は都の発表陽性者を大きく上回る数の人が感染していたが、多くは発症していなかったということ。デルタ株の発症率は10~20%と低かったんです。『デルタ株は強毒化した』と言う人もいますが、実際は数々の変異を経て、弱毒化に向かっていたんです。オミクロン株やそれに続く変異株に “感染拡大力” はあるかもしれませんが、早晩、日本では普通の風邪程度になっていくでしょう」
コロナウイルスによると考えられる、かつての「ロシアかぜ」も数年で弱毒化したという。けっして不自然な未来ではない。