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沖縄県民が嘆くオミクロン株感染への無力感…米軍基地が水際対策の抜け穴に、基地間移動で全国拡散の懸念も
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.12.28 06:00 最終更新日:2021.12.28 06:00
「基地の外に住んで、(仕事は基地に)通いです。帰りに食事することもありますよ。もちろん上官に報告などしません」
12月26日の夜、米軍海兵隊基地「キャンプ・フォスター」がある沖縄県北谷町の飲食店で、本誌取材に現役海兵隊員がこう答えた。
この日、北谷町の飲食店街には多くの「Yナンバー」の車が集まっていた。在日米軍の関係車両を表わすものだ。
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松野博一官房長官は、12月23日の会見で、同日午前までの集計で沖縄県金武町にある海兵隊基地「キャンプ・ハンセン」の基地内で227人の感染者が確認されたことを明らかにした。
沖縄県では2020年夏以降、米軍基地内で感染者が急増。しかし、米軍は私的な外出を自粛する等の通達を出したものの、基地間の移動などで適切な対応が取られた形跡はない。さらに、基地内の感染情報を基本的には非公開にしている。
こうした対応が、2020年末から2021年にかけてコロナ感染者が急増した事態の再来につながるのではないかと、地元住民は不安を感じているという。
「実際、2020年末は感謝祭(11月の第4木曜日)後に県内の感染者が急増。その結果、沖縄には2021年1月から3度めの緊急事態宣言が出されました。
その後も感染拡大の波が何度も訪れ、緊急事態宣言の発令日数が全国最長となりました。その間に観光産業も経済も大きなダメージを負っていますからね。クリスマスなどのホリデーシーズンは怖いですよ」(地元住民)
2021年9月3日以降、在日米軍基地に直接入った部隊のすべてが出国前に新型コロナウイルスの検査を受けていなかったことも明らかになった。
日本政府は11月30日以降、外国人の新規入国禁止などの水際対策を強化しているが、日米地位協定によって、旅券やビザに対する国内法が適用されない米軍兵士や軍属は例外とされている。米軍基地が水際対策の “抜け穴” 状態になっているのだ。
「米軍だけが理由ではないにしろ、結果的に沖縄県では人口100万人当たりの感染者数が東京や大阪といった大都市より多い状態が現在も続いています。
基地には1万人以上の日本人従業員がいて、感染が拡大すれば米軍基地内だけで止めることは不可能です。
米軍は、感染者へのゲノム解析を日本側がすることを拒否しており、感染拡大がオミクロン株によるものかどうかもわかっていません。オミクロン株の世界的な感染拡大に歯止めがかからないにもかかわらず、県や日本政府の水際対策に協力的とは言えない態度に終始しています」(地元紙記者)
沖縄県では「キャンプ・シュワブ」がある名護市を初めとした、本島北部では感染者が急増し、病床がほぼ満床となっている。県も年末年始に向けて、医療ひっ迫の改善に動いている。
また、12月25日までに10人のオミクロン株感染を確認されており、そして、そのいずれもが在日米軍基地に関わりがある人物だった。
「感染源が米国からなのか国内なのかも不明です。とはいえ、部隊の配置計画はこの間も進んでおり、本国の基地からオミクロン株が沖縄県に持ち込まれたのは間違いないと県の保健当局は考えています。
年末に向けて外出し、夜遊びをする米軍兵士からオミクロン株の感染が拡大しているのでは……」(前出・記者)
それでも、日本側はなにもできず、無力感さえ漂っているという。問題は、沖縄県の米軍基地内のクラスター発生は、在日米軍関係者はもちろん、そのほかの日本人にも波及する可能性がある点だ。
在日米軍事情に詳しいジャーナリストが、こう話す。
「沖縄では、移動した兵士が基地の外のホテルに宿泊するケースも多い。日本人にとっても冬休みの観光シーズンで、ホテルには観光客もいますから、接触は避けられません。
また、米軍の輸送部隊は物資だけでなく兵士も運びます。沖縄県から横須賀や福生にある基地に飛ぶこともありえます。関東近郊の基地で過ごす隊員にとって、都内の繁華街に繰り出すのが “定番” の休暇の過ごし方です」
米軍基地内の情報が判明しない限り、こうした往来は知らぬ間におこなわれている可能性が高い。運ばれるのは人や物だけではないのだ。
( SmartFLASH )