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「茨城ダッシュ」「伊予の早曲がり」「名古屋走り」…全国に蔓延する悪質ドライバーの「ご当地交通ルール」に要注意!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.12.31 15:40 最終更新日:2021.12.31 15:44
茨城県は毎年のように「ブランド力」で全国最下位争いを演じるトホホぶり(2013~2019年は7年連続最下位、2020年は42位)だが、知名度の低さは笑ってすませられるが、交通事故はそういかない。
じつは、茨城県は交通マナーの悪さでも知られている。2016年に日本自動車連盟(JAF)が実施した「交通マナーに関するアンケート」によると、茨城県は「無理に割込みする車が多い」と回答した人が65.1%、「交通マナーが悪い」と回答した人が67.3%にのぼり、全国3位というありさまなのだ。そのため茨城県警はたまりかね、2021年に「『茨城ダッシュ』は交通違反です」との警告を発し、危険行為の摘発に乗り出した。
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「茨城ダッシュ」とは、交差点で信号待ちをしていた車が赤から青信号に変わった瞬間、直進する対向車がいるにも関わらず猛スピードで右折し、直進車の前面スレスレで通過する暴走行為のことだ。
「茨城ダッシュ」は危険極まりない行為であり、(1)道交法34条2項、交差点右左折方法違反(2)道交法37条 交差点優先車妨害違反(3)道交法7条 信号無視と、3つの道交法違反に問われ、反則金が発生する。金額は普通車を例にすると、順に4000円、6000円、9000円となっている。
普通のドライバーなら、右折違反で罰金を取られるほどバカらしいものはないと思うだろう。だがこれをおこなうドライバーにとっては、キキキッーと車輪をきしませ、猛烈な勢いで右折することが快感でたまらないという。
「茨城ダッシュ」のような掟破りの交通ルールは「ご当地交通ルール」と呼ばれる。これがいまや、全国に蔓延しているという。「茨城ダッシュ」と同じような右折違反には、愛媛県の「伊予の早曲がり」があり、松山市内のあちこちに「伊予の早曲がり禁止」の看板が立ち、警察官が目を光らせている。
長野県松本市には「松本走り」と呼ばれる悪質運転がある。城下町だった松本市は道路が狭く、交差点はいつも慢性渋滞。これを解消するためか、直進車より右折車が優先されている。赤信号に変わっても、先行車に続いて右折車が途切れないのだ。
車線をまたいで右に左にと車線を変更しながら、ジグザグ運転を繰り返すのは「名古屋走り」。また、黄色信号でも止まらず、かえって猛然と交差点に突入し、通過するのは徳島県のご当地交通ルールになっており、「阿波の黄走り」という。兵庫県の「播磨道交法」とは、頻繁に車線を変更するジグザグ走行、やたらとホーンを鳴らして走りまくることを指す。
山梨県の「山梨ルール」の場合、歩行者は安心して道路も渡れない。歩行者が横断歩道の前に立っていようとまったくお構いなしで、一時停止せずに走り去る車が多いからだ。これは先に挙げた徳島県も同じで、JAFが2020年におこなった「信号機のない横断歩道で手を挙げたとき車が停まる確率」を調べたところ、ワースト5位という結果だった。
また、旅行先でレンタカーを借りて運転する際に気をつけたいのは、沖縄県の「沖縄ルール」。赤信号で停止した車が前方にいて、方向指示器が点滅していない場合、後ろのドライバーはその車が直進するものだと考えるだろう。しかし沖縄では、信号が青に変わり、走り出すと同時に方向指示器をつけるのドライバーが多いのだ。後続車はあわてて急ブレーキをかけるが、間に合わなければ追突してしまうこともある。
茨城県警は「茨城ダッシュ」が、いかに危険で悪質運転であるか、こう説明する。
「『茨城ダッシュ』は、ドライバーの注意力が対向車にばかり集中するので、右折する先を横断する歩行者や自転車などに対する注意力が薄れ、気づくのが遅れるため、思わぬ重大事故になりかねません。『茨城ダッシュ』による検挙数の統計はとくに取っていませんが、2022年も警戒を強め、違反軽減に努めます」
帰省・Uターンラッシュが続くなか、各地で交通事故が多発している。日本の道路交通法は、全国どこへ行っても同じ規則に従って走行する義務を定めたもので、ご当地交通ルールとはこの掟を破るものだ。自慢すべきはご当地交通ルールなどではない、無事故無違反なのだ。
文・岡村 青
( SmartFLASH )