NHKの人気番組『ためしてガッテン』で2017年2月22日に放送された『最新報告! 血糖値を下げるデルタパワーの謎』の内容が誤解を招くものだったとして番組で謝罪をする事態に陥っている。
問題となった内容は「睡眠薬を使って睡眠障害を改善すると糖尿病の治療や予防ができる」というものだ。
開業医の医師Aさんに話を聞いた。
「私のクリニックにも放送日の翌日に放送を見た患者さんが来たんです。病歴は存じ上げていて、これまで糖尿病になったことも血糖値に異常が出たこともありません。その方に『健康になる睡眠薬があるとテレビで見たので処方してほしい』といわれたのですが、放送内容を知らなかったので何のことかさっぱりわかりませんでした」
事情を聞きだし、番組の内容に疑問を持ったAさんは患者さんに説明して納得してもらったという。不眠になったから睡眠薬が欲しいといわれれば薬を処方したり、専門医を紹介したりと対応できるが、訳のわからない内容で薬を出すわけにはいかない。
Aさんはきっぱりと言う。
「NHKだから『きっと正しいに違いない』と疑問を持たない患者さんはたくさんいます。インターネットで謝罪しても、それを見ていない患者さんも多いので、おそらく医療現場の混乱はもう少し続くでしょうね」
Aさんは医師仲間数人と、この放送について話し合ったところ、全員が内容に強い違和感を持っていたという。なかには「睡眠薬メーカーの営業担当者にうまく乗せられたのでは?」と疑う医師までいたそうだ。
しかし、一番の問題点はこうした不確実な医学情報に振り回されて健康を損ねることだとAさんは力説する。
「今回紹介されていた睡眠薬は比較的副作用の少ないものですが、それでも頭痛を起こす人もいます。決して、健康になりそうといった曖昧な根拠で使用するものではありません」
ネット上の「いい加減な医療情報」が話題になったばかりだが、テレビにも信用できない情報はたくさんある。結局は自分で真偽を確認するか、信用できる医師に相談する以外ない。情報が増えすぎた時代のトンデモ医学に惑わされないようにしたいものだ。