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池上彰が新聞「元旦朝刊」特ダネ合戦を読み比べ! 大賞は「毎日新聞の “ヤフコメ改ざん”」

社会・政治 投稿日:2022.01.15 06:00FLASH編集部

池上彰が新聞「元旦朝刊」特ダネ合戦を読み比べ! 大賞は「毎日新聞の “ヤフコメ改ざん”」

 

 14年続いた「朝日新聞」の名物連載「池上彰の新聞ななめ読み」。2021年3月に終了後、初めて本誌で復活する。今回は、各紙の元旦一面を読み比べてもらう。スポーツ紙の「番外編」も乞うご期待ーー。

 

 

 新年最初に、あなたがすることはなんですか? 年賀状のチェックでしょうか。お屠蘇を飲んで初詣でしょうか。

 

 

 私の恒例行事は、元日付の新聞各紙の読み比べです。というのも、元日付の朝刊は、各紙が他紙との違いを出そうと力を入れ、特ダネを打とうとするからです。

 

 元日の特ダネは、掲載した新聞社にしてみれば晴れがましいもの。1年を始めるのに幸先のいい記事です。一方、特ダネを抜かれた他紙にとっては禍々しいもの。すぐには追いかけられないからです。

 

 通常の特ダネですと、他紙は夕刊で追いかけます。夕刊の締切りに間に合わなくても、翌日の朝刊には間に合わせることが可能です。ところが元日の朝刊の場合、その日に夕刊はありませんし、翌日も新聞の発行はありません。どんなに急いでも、掲載は3日の朝刊になります。

 

 しかも、元日は各省庁も企業も休み。他紙の特ダネが本当かどうか、確認しようにもできません。たまたま担当者の電話番号を知っていれば、電話して確認することもできますが、そうでなければお手上げです。3日の朝刊にも間に合いません。他紙にとって「禍々しい」という意味がおわかりになるでしょう。元日の特ダネは、他紙にとって嫌がらせでしかないのです。

 

 こうした元日の特ダネで有名なものは、1995年元日の「読売新聞」です。一面トップで「山梨県上九一色村(当時)で、猛毒ガス・サリンを生成した際の残留物質が警察当局によって検出された」と、スクープしたのです。

 

 今でこそ、1994年6月に長野県松本市で発生した「松本サリン事件」(計8人が死亡)は、オウム真理教の犯行だと知られていますが、発生当時は犯人がわからず、長野県警もマスコミも、事件現場近くに住んでいて警察に最初に通報した人を犯人視していました。

 

 それがこの特ダネで、上九一色村に施設を持っていたオウム真理教が関与した疑いが一気に浮上したのです。

 

 当時、この記事に私も仰天しました。このとき私はNHKの『週刊こどもニュース』を担当し、特ダネ競争の現場からは離れていましたが、「読売新聞」以外のマスコミ各社が情報を確認しようと四苦八苦していたことを記憶しています。これ以降、元日の各紙が、どんな特ダネを放つか、毎年注目しているのです。

 

 新聞各紙は、年末が近づくと、「元日に掲載できる特ダネはないか」と躍起になります。と同時に、新年から始めるキャンペーン企画を何にするかの検討も始めます。新年早々は役所も政治家も休みに入り、ニュースが枯渇するので、紙面を埋めるための算段として、連載ができるキャンペーンのテーマを考えるのです。

 

 以上を知ったうえで、今年の全国紙を読んでみましょう。いずれも、東京本社発行の最終版をもとにしています。というのも、全国紙は東京以外に大阪や福岡など各地に本社機能があり、独自に編集しているからです。また、発送の関係で、遠隔地向けは締切りが早く、都心向けは締切りが遅いので、内容が変わる可能性があるからです。

 

 まずは特ダネ競争から。これは、びっくりするものはありませんでしたが、「読売新聞」の一面トップの「米高速炉計画 日本参加へ」という記事は、読売としては特ダネを意識した大きさでした。「高速炉」とは、通常の原子力発電所よりも効率がよく、放射性廃棄物が出る量を減らせると期待されているもの。原子力発電を推進すべきだという主張をしている「読売新聞」らしい記事でしょう。

 

 とはいえ、新聞各紙が焦って追いかけるほどのインパクトがある記事だとは思えなかったのですが、「日経新聞」だけは3日付朝刊三面で大きく扱っています。見出しは「日本、米高速炉計画に参加」と、「読売新聞」の記事と同じトーンです。さらに本文を読むと、こう書いています。

 

〈米国の原子力スタートアップなどによる高速炉の開発計画に日本が参加することが1日、わかった〉

 

 1日とは元日のこと。なぜ元日に、こんな事実が「わかった」のか。もちろん1日の「読売新聞」の記事で「わかった」のです。アメリカのメディアの場合、どこかの社が特ダネを書くと、他紙は「○○が報じたところによると」と書きますが、日本のメディアの場合、他紙の特ダネだったことを正直に書かないことがよくあります。特ダネを追いかけるのは恥ずかしいという思いがあるからでしょう。

 

 一方、年始から始まったキャンペーンの連載記事で目を引いたのは「毎日新聞」です。「露、ヤフコメ改ざん転載」が一面トップです。書き出しを見ましょう。

 

〈ロシアの政府系メディアが、日本国内最大級のポータルサイト・ヤフージャパンのニュース配信サービス「ヤフーニュース」の読者コメント欄をロシア語に翻訳して転載する際、元の投稿の文章を改ざん・加筆した疑いがあることが分かった。複数の例を毎日新聞が確認した〉

 

 なんとも驚く内容です。「毎日新聞が確認した」とありますから、独自の調査報道であることがわかります。

 

 それにしても、ロシアのメディアは、なぜこんなことをするのか。改ざんされたコメントは、日本に駐留する米軍に批判的な内容になっており、ロシア国内向けに、ロシアの対外政策は間違っていないという印象を国民に植えつける目的だろうという専門家の分析を掲載しています。

 

「毎日新聞」は新年のキャンペーンを「オシント新時代」と銘打ち、大晦日の紙面から展開しています。「オシント」とは、誰もがアクセスできる公開情報に基づく情報収集のこと。情報化時代のメディアリテラシーについて考える企画のようです。シリーズ企画の内容が特ダネになっているのです。見事でした。

 

「毎日新聞」以外の各紙のキャンペーンのテーマは、「朝日新聞」が「未来のデザイン」。その意図は、未来の社会をどう設計すべきか考えようというもの。「日経新聞」は「成長の未来図」。危機に立つ資本主義のあり方を考えるというもの。「朝日新聞」のテーマと似ています。「読売新聞」のキャンペーンは3日付朝刊から始まり、テーマは「岐路の資本主義」。これまた「日経新聞」と似ています。正月の新聞を読み比べることで、各紙の問題意識がみえてきます。

 

 ここからは余談です。スポーツ紙も、元日にはいろいろ企画を考えています。「日刊スポーツ」は「深キョン結婚へ」という大見出し。女優の深田恭子さんが「年内にも結婚する方向で調整していることが12月31日、分かった」という記事です。1月1日に「年内にも」という表現はすごいですね。「方向で調整」とは、微妙な表現です。これなら結婚しなくても「調整がうまくいかなかったらしい」と言い訳できます。逃げ道を残しているのです。記事は注意して読みましょう。

 

 また「東京スポーツ」は、「第1回東京スポーツオカルト大賞」を「勝手に制定」し、「東京スポーツ」の一面を飾ったオカルトネタから「ベストワンを選出した」そうです。今年も我が道を行くのでしょう。

 

いけがみあきら
1950年生まれ 長野県松本市出身 ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。1994年から11年にわたり『週刊こどもニュース』のお父さん役として活躍。2005年よりフリーに

 

(週刊FLASH 2022年1月25日号)
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