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第一線の専門家にぶつける「オミクロン株」9つの質問…「50代の重症化リスクは30代の10倍以上!」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.01.19 06:00 最終更新日:2022.01.19 06:00
1月15日、新型コロナウイルスの新規感染者数は東京都で4500人を、全国では2万5000人を超えた。昨年8月以来の水準となり、その8割以上をオミクロン株が占めている。
身を守るために新たな敵を知るべく、第一線の専門家たちに素朴な疑問をぶつけた。
Q1 感染爆発のピークはいつ、何人くらい?
内閣官房のAI・シミュレーションプロジェクトのメンバーとして、感染拡大のデータ分析をおこなう東京大学の仲田泰祐准教授の「悲観シナリオ」によると、東京都の一日の感染者数は「1月末に2万人超」と予測されている。また、東北大学の小坂健教授は「1月末から2月上旬くらいに全国で数十万人規模という試算もある」と語る。
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昭和大学の二木芳人客員教授も、1月末から2月上旬がピークとみる。
「感染者数の急増ぶりを見れば、今度のピークの感染者数は第5波の倍以上になるでしょう。東京で一日に1万人以上、全国で5万~6万人か、それ以上に増えてもおかしくありません。そうなれば毎日200人、300人の入院患者が出る計算になるので、病床使用率は20%を超える」
Q2 感染するとどんな症状が出る?
「発熱、喉の痛みや咳などの呼吸器系の症状が表われますが、肺炎を起こす確率は低いです。熱も3~4日で下がる場合が多い。味覚・嗅覚障害も見られないので、風邪やインフルエンザと見分けがつきにくいのが特徴です」(二木氏)
症状だけを見ると「ただの風邪」と同じということになるが、白鴎大学の岡田晴恵教授の見解は異なる。
「これまでのウイルスより病原性は低い可能性があります。デルタ株の致死率は約2%であるのに対し、オミクロン株は現時点で0.3~0.5%とされ、インフルエンザは約0.1%です。ただし、過去の感染やワクチン接種による免疫が重症化・死亡をある程度抑制している可能性があるので、オミクロン株そのものの病原性の評価は定まっていません」
無症状や軽症が多いのは、「今のところ若い層の感染が圧倒的に多いから」と話すのは、東京都特別区保健所の関なおみ保健予防課長だ。
「今後、高齢者施設や医療機関内で感染が拡大した場合には、重症者が増えていく可能性も念頭に置いておく必要があります。そうなれば、『ただの風邪』などと言っていられなくなります」
Q3 中高年の重症化リスクはどの程度?
「厚労省の調査では50代の重症化リスクは、30代の約10倍という結果が出ています。年を取ると免疫が弱くなるのに加え、重症化を招く糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病が増える世代だからです。
仕事でも責任が重い地位にいるため無理をして疲労が溜まったり、つき合いで酒を飲んだりと、感染しやすい条件も揃っています」(二木氏)
Q4 中高年が自衛のためにすべきことは?
「軽くても風邪のような症状があれば出かけない、職場に行かない、人に会わないこと。また、大人数・長時間の飲み食いは感染を拡大させるリスクがあるので、とにかく会食は控えましょう。加えて、ワクチンを接種することが重要。いろいろな考え方がありますが、基本的には同僚、部下や上司にもワクチン接種をすすめてほしいです」(関氏)
「オミクロン株は感染力が強く、3密でなくとも感染する可能性があります。特に大事なのは換気です。そして、感染して自宅療養になっても困らないように、体温計や風邪薬、レトルトのお粥やスポーツドリンクなど、ふだん風邪で寝込んだときに必要なものをイメージして用意しておきましょう。毎日飲む血圧の薬などがある方は、多めにもらっておくことも大切です。
また仕事面では、職場で病欠者が1割2割と出ても業務が回るように、社員同士で話し合っておきましょう。小池都知事が呼びかけている、事業継続計画の策定も必要です。2009年ごろに、新型インフルエンザに備えて事業継続計画を作った会社も多いと思います。テレワークのやり方も再度、確認しましょう」(岡田氏)
Q5 感染したらどんな療養をする?
「発症後(無症状の場合は検査後)、10日間の療養期間があります。感染拡大防止のためには隔離が原則で、宿泊療養が望ましいです」(関氏)
「今のところ軽症者であれば宿泊療養になりますが、若いけれども持病がある人やワクチンを打っていない人は、基本的に入院したほうがいいと思います。入院できなくても最低限、宿泊療養をして医療のサポートを受けることが大事ですし、家族にうつさないという意味でも、自宅療養は最後の手段でしょう。
ただ、感染者数がどんどん増えていくとベッドも足りなくなるので、重症化のリスクが低く軽症の人は自宅療養やむなしということになると思います。また、無症状の人はこれまでよりも隔離期間を少し短めにすることも必要です。どのくらいの期間にすべきか、今議論されています」(二木氏)
Q6 新型コロナの飲み薬はできた?
「一時、注目を集めた抗体カクテル注射薬は、オミクロン株では、ウイルスの変異により抗体と反応しなくなったため、効果が低下したといわれています。一方、昨年12月に承認された経口薬・モルヌピラビル(米メルク社製)は入院や死亡のリスクを30%、パクスロビド(米ファイザー社製)は入院や死亡のリスクを89%低下させる効果があるといわれています。これはオミクロン株でも変わらないと考えられています」(岡田氏)
「モルヌピラビルは、診療・検査機関で陽性の診断を受けて処方された場合、薬局から自宅に配送されます」(関氏)
Q7 中高年もワクチンを打てば大丈夫?
「2回接種でも7割ほどは重症化予防効果があります。ブースター接種では、それが9割になる感じです。しかしブースター接種でも感染は完全に防げません」(小坂氏)
「3回めのブースター接種は、一時的にはある程度免疫を底上げしますが、数週間後には低下します。ですから、今後も4回め以降の追加接種が必要となるかもしれません。すでにイスラエルは4回め接種を実施しています」(岡田氏)
一度感染すればもう罹らないのか。
「一度デルタ株に罹って抗体ができたとしても、オミクロン株は抗体をかわすように変異したため簡単に体内へ入ってくるので、残念ながら何回でも罹ります。過去の感染で重症化は多少抑えられるとしても、次の感染は予防してくれないのです」(二木氏)
Q8 オミクロン後も感染拡大は起こる?
「オミクロン株が収束しても、おそらくもう1波、2波はあるでしょうね。オミクロン株は変異が非常に多い。ウイルスの表面のスパイクタンパク質だけでも30カ所の変異が見られる。今後も何回か変異する可能性があり、現実に南アフリカではオミクロンの亜型が出てきています。本当に『風邪のような』ウイルスになるまでにはさらに変異が繰り返され、そのたびに感染拡大は起こるでしょう」(二木氏)
Q9 マスクはいつまで着けるの?
「コロナが終息しても、次のパンデミックは必ず来る。マスクは必要です」(二木氏)
「まさに『風の谷のナウシカ』の世界ですが、個人的には着け続けてほしいです。マスクでインフルエンザ患者も減りました。飛沫感染の予防効果は高いと思います」(関氏)
もうコロナ前には戻れないということか。
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