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最後に笑うのはアマゾン?ヤフーvs楽天IT戦争の行方

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2013.10.25 07:00 最終更新日:2016.03.01 21:53

 10月7日、ヤフーショッピングの出店者向けの説明会で、ソフトバンク・孫正義社長(兼ヤフー会長)が「出店料と売り上げロイヤリティを無料にする」「201×年度までに国内EC流通総額ナンバーワンを目指す」と宣言した。説明会後、記者が「楽天を倒すということですか?」と質問すると「野球では(楽天には)やられたからね」。孫氏は、標的が楽天であることを暗に認めたのだ。

 

 EC(電子商取引)で国内2強と呼ばれるのが楽天とアマゾンだ。この2社のシェアはそれぞれ約29%と約12%。対するヤフーのシェアは6%と大きく水をあけられている。「ナンバーワンを目指す」とは、楽天を倒すと宣言したことにほかならない。

 

 結果はすぐに現れた。発表から1日で新規ストアの出店希望者は1万件を突破、個人の出店希望者も1万6000件、合わせて2万6000件の希望がヤフーに集まった。「東京IT新聞」編集長・西村健太郎氏が解説する。

 

「現状は、楽天が約4万1000店で、ヤフーが約2万店です。1日でヤフーが逆転したように見えますが、希望者すべてが実際に出店するわけではない。ただ、ヤフーの出店数はその後も増えつづけているので、逆転は時間の問題かもしれません」

 

 ヤフーの無料化で勃発したこの戦争の勝敗の帰趨はどちらに決するのか。簡単に決着はつかないと、IT業界に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚氏は語る。

 

「ITの世界では、ナンバーワン企業が一人勝ちするケースが圧倒的に多い。とくに楽天の集客力はすごいので、現状で儲かっている店はそのまま楽天に残るんじゃないか。楽天の高い出店料やマージンを考えても、一気に客が移るとは考えにくい。長い目で見ればヤフーに移る店も増えるでしょうが、当面は初めて出店する会社とか小規模な個人事業主とかだけだと思いますね。そういう意味ではヤフーの無料化はEC市場全体の裾野を広げる可能性はあります」

 

 では、ヤフーの宣戦布告に、当の楽天はどう答えるのか。

 

「楽天は『ECコンサルティング』や『楽天大学』といった講座を通して店舗をサポートする態勢を整えており、楽天の顧客がヤフーに奪われる可能性はないと考えております。したがって出店料などを値下げする予定もありません」(広報)

 

 ヤフーの攻勢に対し、楽天が一見、静観している理由を、業界関係者がこう明かす。

 

「楽天は、ヤフーに出店者が流れることはもちろん覚悟していますが、実際には質の悪い出店者がほとんどだと考えているんです。現状でも、楽天では出店できなかった業者がヤフーで出店している例が数百社あることが楽天の調査でわかっています」

 

 目を転じれば、この戦争にまったく影響を受けない、もう一人の巨人がいる。楽天とともにEC業界の2強といわれるアマゾンだ。

 

「アマゾンは自分で仕入れた商品を自分で売るから、今回のヤフーの無料化も関係ない。実際、楽天のシェアをだんだんと奪ってきています。ミクシィがフェイスブックにほぼ駆逐されたように、この10年、日本のインターネットは外資に侵食されてきました。ヤフー対楽天などと“コップの中”の争いをしている間に、漁夫の利を得るのはアマゾンですよ。孫さんも三木谷さんも、そのことをわかっているんでしょうけどね」(佐々木氏)

 

(週刊FLASH 2013年11月5・12日)

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