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国際社会は北朝鮮を侮っていた…!金正恩氏「ミサイル7連発」に隠れた “本気の対米姿勢” と “経済繁栄” の真意

社会・政治 投稿日:2022.02.18 06:00FLASH編集部

国際社会は北朝鮮を侮っていた…!金正恩氏「ミサイル7連発」に隠れた “本気の対米姿勢” と “経済繁栄” の真意

1998年8月に発射された「テポドン1号」。ここから約24年の間に、北朝鮮は核の保有国となり、ミサイルの開発、発射技術を格段に向上させた(写真・共同通信)

 

「米本土を射程に入れたミサイルを発射して世界を震撼させることができるのは、この地球上でわが国だけだ」

 

 朝鮮人民軍の創設記念日である2月8日、北朝鮮外務省は談話を発表し、核・ミサイル開発の能力をこう誇示した。

 

 北朝鮮は今年に入って、1月だけで計7発の弾道ミサイルを発射している。米朝が一触即発となった2017年のミサイル危機を思い起こさせる乱射ぶりだが、その狙いはどこにあるのか。拓殖大学主任研究員のコ・ヨンチョル氏が、考えられるいくつかの理由を挙げる。

 

 

「ひとつは、3月9日の韓国大統領選に向けたアピールです。親北派である文在寅政権の与党である『共に民主党』の大統領候補、李在明氏を側面支援するのが目的です。ミサイルで、韓国の国民に戦争への恐怖感を醸成し、対話路線の親北派候補を有利にさせようとしているのです。

 

 2つめの理由は、最近、北朝鮮で拡散している “韓流ブーム” の牽制です。放置しておくと、体制崩壊につながる恐れもあります。ミサイル発射によって国内の内部結束と引き締めを図る目的もあるでしょう」

 

 2月16日は父・金正日の生誕80周年、4月15日には祖父・金日成生誕110周年。金正恩氏自身も、朝鮮労働党の第一書記に就任して4月で10周年を迎える。

 

「ミサイル連射は、その “祝砲”。北京五輪が終われば、また再開する」というのは「デイリーNK」編集長・高英起氏だ。じつは北朝鮮の弾道ミサイル技術は、すでに世界最先端レベルにあるという。

 

「これだけ実験しているのだから、技術は発展せざるを得ません。日本をはじめ国際社会は、北朝鮮を完全に侮っていました。その間、核・ミサイルの技術をどんどん向上させていたわけです。まさに、ハリネズミの針を研ぎ澄ませてきた、ということです」

 

 これまで北朝鮮のミサイル発射は、追い詰められたゆえの暴発や、経済支援を得るための “瀬戸際外交” ととらえられることが多かった。しかしそうではないと、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が言う。

 

「『米国を交渉に引きずり出す目的でミサイル発射している』との見方もありましたが、それは事実ではありません。純粋にミサイル技術の開発が目的です。アメリカからの攻撃の抑止力という意味では、まだ北朝鮮の軍事力は未熟です。

 

 あくまで、核ミサイルによる対米抑止力確保を目指しているのです。何かをアピールする意図でミサイルを撃っている、という見立ては、北朝鮮の “本気度” を軽く見ているので、危険だと思います」

 

 北朝鮮の国力を考えた場合、核とミサイルの開発を進めることこそが、国防力を高めながら財政負担を減らすことにつながるーー。韓国では金総書記にはそんなしたたかな「戦略」があったのでは、という分析も出ている。

 

 多感な10代をスイスで過ごし、先進国の生活を知っている金総書記は、「経済的に繁栄した北朝鮮」を夢見ている、というのがその背景にある。

 

「人民が二度と腰のベルトを締めなくても(食糧不足で痩せなくても)いいよう経済建設に集中する」

 

 第一書記就任直後の2012年4月、金総書記はこう宣言した。実際、中国との貿易や自由市場の黙認など市場原理の導入で、一時は人々の暮らしも上向いた。

 

「いま、北朝鮮経済はよくありませんが、金総書記が父や祖父と違うのは、経済がうまくいっていないことを認め、謝ったことです」(黒井氏)

 

 27歳の若さで後継者となり、経験不足を危ぶまれた金総書記は、いまや「金正恩主義」なる言葉も生まれるほど、権力基盤を強固にした。将来的には、中国を後ろ盾に北朝鮮主導で南北統一を実現し、“初代大統領” への就任を狙っている、と分析する研究者までいる。

 

「一方で、独裁者としての冷徹な顔もあります。軍と党のトップや側近を次々と粛清し、叔父でナンバー2の張成沢氏も処刑しました。この10年で軍総参謀長を7人、国防大臣を8人、交代させています」(「コリア・レポート」編集長・辺真一氏)

 

 硬軟使い分ける戦略からは、切れ者の片鱗が見て取れる。翻って、わが日本はどうか。1月27日、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを2発、発射したことを受け、岸田文雄首相は「たいへん遺憾なこと」と述べるだけだった。どちらが実行力を持つ指導者か、誰の目にも明らかだ。

 

( 週刊FLASH 2022年3月1日号 )

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