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『鎌倉殿の13人』 研究者が語る “喝” と “アッパレ”「宗時は暗殺ではなく戦死だが、源平合戦の描写はリアル」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.02.27 06:00 最終更新日:2022.02.27 06:00
多彩なキャラクターが織りなす人間模様はフィクションとして十分楽しめるが、歴史好きの視聴者からは「史実と違うのでは?」とツッコむ声が数多く聞こえてくる。
そこで本誌は、ベストセラー『応仁の乱』、そしてドラマの主人公たちを論じた『頼朝と義時』の著者で、日本中世史研究者の呉座勇一氏に、あえて「ここが喝!」とツッコミどころを挙げてもらった。
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呉座氏は当初、今回のドラマの時代考証を務めるはずだったが、ネット上での発言が波紋を呼んで降板した人物だ。
■景時は “大将首” を見逃すはずない
見過ごせないのは第6話の石橋山の戦いだ。頼朝が平家方の大庭景親(國村準)に敗れて山中の洞窟に隠れているところを、梶原景時(中村獅童)に見つかるが、なぜか見逃してもらう場面があった。
「これは『吾妻鏡』にも書かれたエピソードですが、話として出来すぎだと思います。頼朝を討ち取れば “大将首” で大手柄ですから、見逃すというのは理屈に合いません。
景時は、後に頼朝第一の側近となりますが、もともとは敵だった景時が、なぜ頼朝の信頼を得たのかという謎が以前からあった。
それを説明する理屈として、頼朝を救ったという話が、後から作られたのです。よりドラマチックにするための創作でしょう」
■宗時は暗殺ではなく戦死した
同じく石橋山の戦いで、川沿いで休む北条宗時が、背後から小太刀で一瞬のうちに殺されてしまうシーンもあった。
「史実では、宗時は石橋山の戦場で戦死していて、ドラマのように暗殺されたわけではありません。
暗殺というと忍者のイメージですが、源平合戦の時代に忍者がいたということは、史料上確認できないので、そのへんもいかにも作り話だと感じました」
いっぽうで、史実への忠実さや斬新な解釈で「アッパレ」に値する指摘もある。たとえば源平合戦の描き方だ。
■頼朝は平家より先に “身内” と戦った
「これまでは、頼朝が源氏の棟梁だということは自明の前提とされ、頼朝は源氏のトップとして平家と戦ったというイメージが強かったと思います。
しかし、源氏にはほかにも棟梁の候補者はいて、頼朝のライバルは多かったのです。すでに死んだ源頼政(品川徹)や、これから登場する信濃源氏の木曽義仲(青木崇高)などがそうですね。
平家を討つ前に、そうした源氏一門のライバルたちと戦って勝ち抜かなければいけなかった。
ドラマでも、甲斐源氏の武田信義(八嶋智人)に『頭を下げたくない』頼朝の葛藤が強調されていましたが、これは最新の研究を反映したもの。今までのドラマでは描かれなかった注目すべき点です」
俳優陣の演技にも「アッパレ」を捧げたいという。
■小池栄子は “尼将軍” にぴったり
「女優陣が素晴らしい。りく(牧の方)を演じる宮沢りえさんは、貴族出身の雅な雰囲気を醸し出しているし、小池栄子さん演じる北条政子は “尼将軍” となる政子のイメージにぴったりです。
じつは、頼朝を大泉さんがやると聞いたときは、イメージが違うのでちょっと驚きました。でも、逃げ回るところはよかったですね。
今後はだんだん冷酷な権力者、独裁者としての頼朝が強調されていくと思いますので、どう演じられるのか楽しみです」
これから義経(菅田将暉)も加勢し、日曜の夜が熱くなる。