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公明党「3年3か月の野党暮らし」で自民党への影響力が大幅アップ

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.02.28 11:00 最終更新日:2022.02.28 11:00

公明党「3年3か月の野党暮らし」で自民党への影響力が大幅アップ

岸田首相と、公明党の山口那津男代表(写真:アフロ)

 

 今や公明党を抜きに、日本政治は語れません。

 

 民主党が参議院の運営で苦しんで政権担当能力を持てなかった理由は、野党が自民党を切り崩せなかったことと、公明党が自民党に付き合って「連立野党」をやっていたためです。これが、現代に至る日本政治に決定的な意味を与えました。

 

 

 公明党は1999年から自民党と連立を組んでいますが、小泉内閣や安倍内閣(2006年、2007年時)では、あまり発言権がありませんでした。

 

 たとえば東京都議会議員選挙は公明党が重視する選挙で、その前後3か月以内の衆議院選挙を嫌います。しかし、小泉首相は郵政選挙で、関係なく解散権を行使しています。麻生首相も、リーマン・ショックへの対応を理由に、予定されていた解散をやめました。

 

 ただ、これは昔の話。自民党総裁である総理大臣が創価学会・公明党の意向を気にせずに解散を延期できたのは2009年の麻生内閣まででした。

 

 2009年の衆議院選挙で自民党が敗北し、野党に転落した時に公明党もいろいろと悩んだそうですが、公明党は与党になった民主党にすり寄るよりも、自民党と野党暮らしを付き合った方が後々で力を得られるであろうと判断しました。

 

 3年3か月の野党暮らしに耐えたことが、今活きていますから、的中です。

 

 その2009年の衆議院選挙は、国民が自民党の麻生内閣に対して本気で怒った選挙でした。国民が本気で怒った時は、創価学会が自民党についていても選挙に勝てないことが明らかになった選挙でした。

 

 ただ、国民が本気で怒るのは15年に1回ぐらいです。だから自民党としては、国民は15年に1回しか怒らないので創価学会と組んでおけば、いつまでも与党でいられると考えています。

 

 ここから、2012年の衆議院選挙に勝利し、与党に戻った自民党の視点で見ていきます。2012年から8年間の安倍自民党総裁の時代で6回選挙が行われましたが、その内容を少し振り返ってみましょう。

 

 2012年、第46回衆議院議員総選挙では、294議席を獲得する大勝で民主党から政権を取り戻します。

 

 2013年、第23回参議院議員通常選挙では、自民党は115議席を獲得して勝利し、自民・公明両党で参議院の多数を握ることができました。ねじれ国会を解消します。

 

 2014年、第47回衆議院議員総選挙では、消費税10%への増税延期を問う解散総選挙でした。291議席を獲得し勝利します。

 

 2016年、第24回参議院議員通常選挙でも、消費税増税延期を掲げ、自民党は121議席を獲得し勝利します。

 

 2017年、第48回衆議院議員総選挙は、同年9月に民進党政調会長の山尾志桜里が不倫スキャンダルで騒がれた瞬間に解散をして勝利しました。

 

 2019年、第25回参議院議員通常選挙は、立憲民主党の枝野幸男が勝たせてくれた選挙でした。消費税10%への引き上げを掲げながら自民党が勝利します。

 

 安倍晋三が自民党総裁を務めた8年間での選挙は、自民党の6連勝という結果でした。

 

 この8年間で野党は何をしていたのかと言うと、自民党を選挙で勝たせるための補完勢力となっていました。2012年の衆議院選挙で敗北し、野党に再び戻った民主党は分裂を繰り返し、民進党、立憲民主党と変わっていきます。

 

 民進党も立憲民主党も野党第一党でしたが、安倍内閣を選挙ですべて勝たせてしまいました。

 

 ここで、安倍内閣の無敵の方程式を紹介します。「日銀が金融緩和をする → 株価が上がる → 選挙に勝てる → 誰も引きずりおろせない」です。

 

 2013年の日銀総裁人事で黒田東彦日銀総裁、岩田規久男副総裁を決めて、アベノミクスによる金融緩和政策を実施し、株価を上げて景気が良くなっていると国民が感じると支持率も上がり選挙で勝てるという仕組みです。

 

 選挙で勝てる総理大臣、自民党総裁を降ろす自民党議員はいなくて安倍内閣は永遠と続くという状況です。野党はまったくお呼びではありません。

 

 ところが、2014年4月1日から消費税を8%に増税して景気回復を台無しにしてしまいます。その状況で、10%に再増税するかどうか。

 

 2014年11月、安倍首相は消費税10%への増税延期の信を国民に問うために解散総選挙に打って出ます。この時、全野党が増税延期に賛成をしていました。そのため解散の大義名分はない選挙でした。ですが、解散総選挙を実行しました。

 

 解散した理由は簡単です。創価学会・公明党に事前に解散をすることを約束していた以外にありません。

 

 解散総選挙の1か月前、11月16日に行われた沖縄県知事選挙では、公明党は組織票をまとめることができず、自主投票としたため不戦敗となりました。

 

 2014年の秋に増税判断をする時には、既に解散することを決めていました。同年12月14日に解散総選挙が行われるのですが、創価学会・公明党は解散総選挙に合わせて事前に動いていました。

 

 もはや自民党は、公明党の意向を抜きに解散総選挙をすることができない政党になっていました。そして、そこまで落ちぶれた自民党を脅かす野党が一つもないのです。

 

 国民はどんなに不満があっても、自民党による政治を承認する以外に選択肢はなかったのです。

 

 

 以上、倉山満氏の新刊『歴史検証 なぜ日本の野党はダメなのか? 「自民党一強」を支える構造』(光文社新書)をもとに再構成しました。「無能な野党」に支えられている自民党の政権独占について考えます。

 

●『歴史検証 なぜ日本の野党はダメなのか?』詳細はこちら

 

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