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チェルノブイリ観光にみる“福島を忘れない”ためのヒント

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2013.12.18 07:00 最終更新日:2016.03.01 21:52

「現地のカップルや観光客たちが、事故を起こし、石棺で覆われたチェルノブイリ原発4号炉をバックに笑顔で記念撮影をしている光景を見て、大きなショックを覚えました」

 

 こう語るのは気鋭の論客、東浩紀氏(42)だ。今年4月、ネット上でチェルノブイリ視察ツアーの資金を募り資金を捻出、有志らと現地を訪れ、そこで得た見聞をもとに『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』(ゲンロン)を出版、注目を集めた。なぜ彼は、チェルノブイリを目指したのか。

 

「原発賛成か反対かにかかわらず、福島をどのように再生していくか、という議論はほとんどおこなわれてきていないのが現状。そんなとき、ふと思い浮かんだのが“福島第1原発観光地化計画”という言葉でした。チェルノブイリではすでに“原発ツアー”が催されているという話を聞いていたので、まずはその実態を見てみようと」

 

 近年、広島やアウシュヴィッツなど、歴史上の悲劇の地を訪れる旅、「ダークツーリズム」という新しい観光の概念が生まれ、広まりつつある。東氏はその「暗い観光」を“福島再生”の鍵と考え、チェルノブイリの現状に注目したのだという。

 

「ウクライナ政府は’11年12月、立入禁止区域“ソーン”内のツアーを正式に解禁。ウクライナ非常事態省の外郭団体に認められた旅行会社が、政府公認のゾーンツアーを主催できるようになったんです」

 

 これにより、全世界からツアーの申し込みが殺到。現在では1日約300人前後、年間で約1万4000人もの人々が、原発周辺地域の廃墟や博物館を巡るツアーに参加しているという。

 

「ウクライナに行ったとき、事故現場近くに生まれ育ち、NPOツアーを主催するようになったアレクサンドル・シロタさんはこう言いました。“たとえツアーであってもチェルノブイリを記憶してくれることは歓迎する”。仮にタブーの場を覗くスリルを味わいたいといった不純な気持ちがあったとしても、忘れ去られるよりはずっといい、と彼は言うのです」(東氏)

 

 東氏は現在、福島第1原発周辺の「観光地化」の実践に取り組みはじめている。 

 

「理念や理想論だけでは、悲劇の記憶は継承されない、商業主義との接点こそが記憶の継承を可能にする、と思います」(東氏)

 

(週刊FLASH 2013年12月24日)

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