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「目的は個人資産の没収?」北朝鮮No.2処刑の真相

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2013.12.19 07:00 最終更新日:2016.03.01 21:52

 12月13日に北朝鮮の朝鮮中央通信が伝えた、北朝鮮No.2とされ、金正恩の後見人として権勢をふるった張成沢・前国防委員会副委員長(67)の処刑は、全世界を震撼させた。だが、これは異例のことだという。元防衛庁分析官の西村金一氏は次のように語る。

 

「重要人物の処刑は数々あったが、執行直後に公式発表されたのはこれが初めてではないか。昨年に更迭された北朝鮮軍元トップの李英浩総参謀長も、北朝鮮筋からの情報として、処刑されたのではないかと伝えられているだけです。

 

 今回は党軍委員19人による軍事法廷が開かれて死刑判決が下ったなど、判決に至る経緯までも公表されています。北朝鮮を20年間ウオッチしていますが、これは初めてのことです」

 

 では、異例の公表はなぜおこなわれたのか。「処刑を公にしたのは張成沢の個人資産を没収するため」と話すのは、マレーシアの華僑系金融機関の幹部。この幹部は金正男と直接会って取引をしたこともある金ファミリーと通じる人物だ。

 

「米国から北朝鮮がテロ支援国家に指定された際に、金ファミリーの海外個人資産が調査対象となり、ほぼ全容が解明されています。私が把握している範囲に限れば、張成沢氏関連の資産としては、マレーシアとパナマの金融機関に企業名義と法律事務所名義の信託資金がある。その額は2億1900万ドル(約226億円)にもおよびます」(マレーシアの華僑系金融機関の幹部)

 

 張成沢は、各国が北朝鮮におこなっている援助の上前や、中国企業などが北朝鮮に進出する際の仲介料を不正に得て巨額の資産を蓄えたという。

 

 処刑に先だって、朝鮮労働党は張成沢を党と軍の全役職から解任し、すべての権限と資格を剥奪することを決定した。これには財産の没収が含まれるのが慣例だ。

 

「’08年に北朝鮮は米国からテロ支援国家の指定を解除されました。同時に関連資産の凍結が解除されたので、北朝鮮は張氏の個人資産を没収して国庫に移すことができる。ただし、それは張氏が死亡しており、なおかつ張氏が資産を置いている金融機関がその死亡を認識していることが条件です」(マレーシアの華僑系金融機関の幹部)

 

 なんと処刑の発表は、北朝鮮が張成沢の資産を“強奪”するためなのだ。外貨不足に悩む北朝鮮。張成沢のドル建ての資産は貴重な外貨収入になる。

 

「今回の更迭劇のシナリオを描いたのは崔竜海軍総政治局長であるのは間違いない。すでに、党書記局を中心に幹部の大部分を粛正しており、軍部独裁が一層強まりました。ミサイル発射の燃料代金にも事欠いている状況なので、張成沢の処刑発表が資産目当てでも不思議ではない」(西村氏)

 

 金ファミリーの威光を背に権勢を振るっていた張成沢。17日は義兄・金正日の命日である。2周忌を前にした義弟の突然の処刑に、義兄も驚いているに違いない。

 

(週刊FLASH 2013年12月31日号)

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