ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの制裁として、国際社会は「SWIFT」(銀行間の国際決済システム)からの締め出しや、ロシア国内での事業停止などを進めている。
バイデン米大統領は、3月1日、ロシア航空機のアメリカ領空への乗り入れ禁止や経済の締めつけ強化を宣言し、「プーチンは今後も高い代償を払い続けることになる」と話した。ロシアの孤立化は止まらない。
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ロシアは世界有数のエネルギー大国だ。ウクライナは世界有数の農業大国でもある。侵攻による供給網の寸断を受け、現在、エネルギーと穀物価格が高騰している。
3月2日、WTI原油先物は一時1バレル114ドル台と2011年5月以来の高値をつけ、3月4日には、シカゴ商品取引所の小麦先物価格が7%近く上がった。1週間では40%超の上昇となる。
こうした国際市況について、岸田文雄首相は「間違いなく日本にも影響がくる」と述べたが、明治大学准教授の飯田泰之氏は、直接的な影響はそれほどなく軽微だと明かす。
「目に見える動きとしては、サハリンでの天然ガス開発事業が事実上、白紙に戻ったくらいです。もともと日本は、ビジネスやエネルギーなど、ロシアへの依存度が低いのです。
ロシアから天然ガスの供給が絶たれたヨーロッパのようなことも起きない。もちろん、エネルギー価格はしばらく高値が続くため、それによるダメージはあるでしょうが」
日本人にロシアに対する誤解があると指摘するのは、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏だ。
「世の中には “ロシアは大国である” というイメージがありますが、ロシアは軍事大国であって経済大国ではありません。
GDPでいえば、ロシアは日本の3分の1、中国の10分の1、アメリカの16分の1という規模で、そのマーケットを失っても、日本で売り上げが立たなくなるようなレベルではありません。
メディアは、トヨタが現地工場を停止するとか水産物の輸入がなくなるとか、個別の例をクローズアップしがちですが、ロシアと日本の貿易額は、そもそもそれほど大きくないのです。
これが中国だったら大変ですが、ロシアと貿易できなくなることで、日本経済の成長率がガタッと落ちることはないでしょう」
しかし、日本には “個別の痛み” があるという。
「この1年、ずっと円安が続くなかで資源高が起きた。円安による輸入コスト高に加え、商品そのものの価格高騰ぶんが乗っかるので、日本は不利です」(前出・唐鎌氏)
政府は3月4日、東京や大阪など18の都道府県で、まん防を21日まで延長することを決定した。
「賃金が上がるわけでもなく、経済は停滞したまま。政府は、ここまで資源が高くなるとは想定していなかったでしょう。
さらなる社会の疲弊を考えれば、まん防の延長には、疑問を持たざるを得ません」(同)
( SmartFLASH )