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今こそ国際交渉に呼びたい…米国に勝利した「伝説のクジラ官僚」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2014.04.14 07:00 最終更新日:2016.03.01 21:43
3月31日、日本とオーストラリアが威信をかけ、4年にわたった裁判が結審。日本の完敗に終わった。オーストラリアの裏庭にあたる南極海で、日本が行う調査捕鯨を「事実上の商業捕鯨だ」として、国際司法裁判所(ICJ)に差し止めを求めたのだ。
‘90年代に捕鯨外交を立て直し、タフネゴシエーターと恐れられた小松正之元水産庁漁業交渉官(60)は言う。
「日本政府は、調査捕鯨の実態論や科学論を避け、管轄権についての国際法議論を前面に出して戦った。主張には“捕鯨問題はICJの管轄外だ”というものもあり、判事の心象が悪くなった可能性はある」
小松氏は、’91年に捕鯨交渉を任され、まず’93年の国際捕鯨委員会(IWC)総会を28年ぶりに日本(京都)で開催。それまでIWCでは捕鯨国6カ国に対して反捕鯨国は20カ国だったが、この総会で、中止されていた日本沿岸での小型捕鯨枠を要求し、反対16対賛成10と健闘した。
反捕鯨国は危機感を強め、さまざまな“いちゃもん”をつけてきた。しかし、そのたびに調査捕鯨枠を拡大する小松氏を反捕鯨国は恐れ、批判の矛先をゆるめた。だが、小松氏の反撃は続く。
「調査捕鯨がDNA調査だけでは弱いので、複数にした。クジラの胃の内容物まで徹底的に調べました。胃を開いて、中にいる魚をカウント。これは視覚的にもインパクトがあった」(小松氏)
そして’99年、類推されるクジラ摂餌量は人間の3〜5倍という調査結果を出し、「クジラが絶滅の危機」どころか、人間と競合する生き物だと証明した。
’02年、再び日本の下関で開かれたIWC総会。米国が求めた「原住民生存捕鯨」の捕獲枠に対し、「それなら日本の沿岸漁獲枠を認めよ」と真っ向から対決。
結果的に、米国提案を否決に追い込んだ。小松氏が、自身の発言に割り込んだ米国人コミッショナーに対し「Let me speak(俺に話させろ)」と発言したことが「日本人が米国人を黙らせた」と大きなニュースにもなった。
「この米国人コミッショナーも旧知の間柄だからできたこと。我々はよく対話した。対話すれば相手が何を考え、どう出てくるかわかる」(小松氏)
安倍政権が国際司法の場でなめられている現状に、「圧力に屈しちゃダメ。日本は堂々と主張すればいいんです」と語る“伝説のクジラ官僚”小松氏。この男、国際交渉の場に、もう1度呼ぶべきではないか。
(週刊FLASH 2014年4月22日号)