リクルートが運営する新卒向け求人サイト「リクナビ」。そのビジネスモデルは新卒を採用したい企業から情報掲載料を受け取り、収益を上げるというもの。企業は120万円の基本料金を支払い、そのうえで説明会や面接予約画面の制作料などのオプションを加えていく。エントリーした学生に向けて案内を通知するのにも、メール1通×エントリー人数の料金が発生。3月末には、学生に過剰にエントリーを煽る画像がツイッターに投稿され、注目を集めた。
中堅IT企業の人事部長は「大半の学生は『リクナビ』を見ており、知名度のない当社にとっては広告媒体として有効です」という。東証一部上場の建築設計業の人事課長は「自社のホームページだけで十分母集団を形成できます。ただ、ナビに出せば世間に対して広く募集をかけているという言い訳にもなる。エントリー数が毎年一定以上あるということが採用担当者の評価にもつながるので、無視できないのが実態なのです」と本音を語った。
就職ナビの費用が高すぎるという不満も多い。ある金融業者は毎年30人程度の新卒を採用しているが「年間の採用コストは3000万円。うち就活サイトに1000万円強を支払っている」(採用課長)。大手不動産業の人事課長は「『リクナビ』は他社に比べて高いというイメージがある。カスタマイズするにはさらに費用がかかり、食い物にされてしまう」と不満を漏らす。
さらに「『リクナビ』の営業担当はよく代わるうえに高飛車で、ガツガツしている。できれば使いたくないが仕方なく使っている。うちだけではなく、他社からも同じ話をよく耳にする」(建築設計業の人事課長)という話も。
本来なら志望度の高い優秀な学生を自社で集めることができれば就活サイトは必要ない。実際にマザーズ上場企業のアイティメディアは’11年度以降、就職ナビの利用をやめてフェイスブックを駆使した採用活動を展開。応募者は減少したが「フェイスブック上の情報のやりとりを通じてお互いを深く知ることができ、質の高い学生の採用につながっている」(採用担当者)と言う。採用数は10人前後だが、採用コストも以前の500万円から20万円程度に減るという効果も生んでいる。
少子化のなかで大卒は増えつづけ、一流校でも学生のレベルは低下し、玉石混淆状態にある。企業側の選別能力が昔以上に求められているなかで「一定時期での学生の一括採用とリクナビに頼るという旧態依然のやり方は通用しなくなるだろう」(IT企業人事部長)。
今年も、約50万人の大学生の大半が就職戦線へと送り出される――。
(取材・文/溝上憲文)
(週刊FLASH 2014年5月6日号)