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中国「ゴミ溜め隔離施設」動画を入手! 「これではまた集団感染してしまう」現地からのSOS
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.05.12 06:00 最終更新日:2022.05.12 06:00
「こんなひどい場所ではクラスターが発生して、また集団感染してしまうよ!」
そこらじゅうに資材や段ボール、ガラクタが散らばった“ゴミ溜め”の中で、吐き捨てるように中国語で怒鳴る男性。わずか数十秒の短い動画には、あまりに劣悪な上海の新型コロナウイルスの隔離施設が収められていた――。本誌にこの“SОS動画”を提供してくれたジャーナリストの初田宗久氏が語る。
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「知人を経由して動画を入手しました。上海郊外のエリアにある、建設途中のまま放置されていた公共施設を、無理やり隔離施設として利用していると思われます。感染が広がった当初、当局は小学校や展示会場などに次々と新型コロナ陽性者や濃厚接触者の隔離施設を設営していきました。
しかし、増え続ける陽性者に対処しきれなくなり、市民はこうした劣悪な環境に押し込められているのです」
上海のロックダウンは、すでに5週間以上続いている。しかし、5月3日の新規感染者数は4982人で、隔離地域外でも毎日50人程度の新規感染者が出ている。上海当局は、ロックダウン解除の条件を市中感染“ゼロ”としているため、全面解除への道のりはまだまだ遠い。
日系企業の上海支社で支社長を務める青木亮佳氏が、現地の様子を教えてくれた。
「ロックダウンが始まった当初、いちばん悩まされたのは食料不足です。子供たちには3食用意しましたが、私と妻は毎日1食だけ。別のスタッフは3日間お菓子の『男梅』だけで飢えをしのぎ、日本領事館に助けを求め、餓死を免れたという状態でした」
とはいえ、青木氏が暮らすのは、市内でも欧米人が多く暮らす高級住宅街だ。
「現在では、ケンタッキーやタコベルなど外食のデリバリーもできるようになりましたし、配給される食料も十分です。問題なのは、上海北部の宝山区など、地方出身者や低所得層が多く住む地域です。依然として食糧難が続いているそうで、政府への激しい抗議が続いています」
現地在住のライター・もがき三太郎氏はこう語る。
「動画のような急造された隔離施設や仮設病院のことを『方艙医院』(コンテナ病院)といいます。地方の出稼ぎ労働者などは、ふだんから“タコ部屋暮らし”なので『毎日タダ飯が食える』と皮肉交じりの声を上げている人もいます。
簡易的な仕切りしかないのに堂々とセックスを始めるカップルや、酒盛り、喧嘩まで、施設内での“庶民の暮らし”を投稿した動画がSNSに次々アップされています。当局にとっては“恥部”なのですぐ消されますけどね」
中国人民がいかに厳しい生活を送ろうと、習近平国家主席にとって“ゼロコロナ”は絶対に曲げられない政策だ。
「コロナ禍当初、欧米が感染拡大に苦しむなか、武漢での感染を抑え込めたことで習近平は『社会主義制度の優越性を証明した』と自画自賛しています。上海の感染者数がピークを迎えていた4月9日には『中国の感染防止は金メダル』と言ってのけたほどです。
今秋予定されている党大会で3期めの党総書記就任を目指す彼にとって、上海でも当然感染者を“ゼロ”にする必要があるのです」(初田氏)
庶民が権力者の横暴に振り回されるのは、どこの国でも一緒なのだ。