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ひろゆき氏の「子ども政策批判」に明石市長が「5年前どまりの認識」と反論!「私が首相なら3年で日本を立て直す」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.05.17 22:02 最終更新日:2022.05.17 22:03
5月10日、実業家のひろゆき氏が、兵庫県明石市が実施する、子どもに向けた5つの無料化(「医療費」「給食費」「保育料」「遊び場利用料」「おむつ代」)について、Twitterで次のようにコメントした。
《明石市で出生率も上がって、財政も問題ない事が実証されてるのに、他の地方自治体が真似しないのを見ると、少子化対策をするべきだと考える首長も住民も少ないので、国全体では通らないという事なのではないかと。。。》
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すると、明石市の泉房穂(ふさほ)市長は同じくTwitterで、即座にこう反論した。
《他の自治体についてですが、数年前までは、市長会でも孤立無縁でしたが、一昨年あたりから、一気に流れが変わり出しています。明石市の近隣自治体では、オセロのような“手のひら返し”が始まっています。今は、時代の変わり目かと。》
この発言の真意とともに、いま、地方で生まれつつある潮流について泉市長に聞いた。
「ひろゆきさんとはABEMAでも一度、対談したことがあり、非常にクレバーで発想力のある方だと思います。彼は、理想論より現実を本音で言うスタンスが世の中に受けている。きれいごと言うたってそんなん簡単ちゃうよね、という。このツイートも、彼らしいなと思った。
でも、私は政治家をやっている以上は理想を語り、理想を形にするのが仕事だから、それをあきらめてはいけないというメッセージを出したい。あきらめるとあなたは言えるけど、私は言えない。そして、あきらめる必要もない。明石の施策はほかでもできるし、国なんか、もっとできるよと発信したい」
実際、明石以外の自治体でも「無料化」の動きは広がってきているようだ。
「明石と同じように、所得制限なしで18歳までの医療費無料化をおこなっている自治体は、兵庫県下で10を超えました。西宮市では3月の市長選で、自民も維新も民主系も、3人とも『18歳までの医療費を完全無料化します、明石市のようにやります』って口を揃えるから、びっくりしましたよ。かなり風向きが変わってきた。政党は関係なく、超党派で子ども政策ができるようになってきたということです。
いま、兵庫県は選挙ラッシュ。加古川市長選は6月だし、稲美町も5月、播磨町も7月に町長選がある。新人候補なんて全員、私のところに電話をかけてくる。現職も同じ。セリフはみんな『明石の真似します』で、明石市長の取り合い。市民に『明石のようにやって』と言われるから。兵庫では、明石を真似しないと選挙で勝てない状況になっている」
この子供政策は、明石市、あるいは泉市長が特別だから実現できているわけではないと、泉市長は強調する。
「『明石は金持ちやからできた』『市長が剛腕やからできた』と、一般的にはよく言われるけど、そんなことはないよ。まず、明石は貧乏な街だから。それから剛腕だというのは、たしかにゼロから1を作るときは多少、荒っぽいことをする必要があったけど、明石でできた政策のまねをするだけなら誰でもできる。普通に予算をシフトすれば済む話なので。
実際、剛腕でもない普通の市長が、荒っぽいこともせずに明石と同じ取り組みができています。結局、できないという思い込みがあっただけ」
どのような予算設計で、明石市は5つの無料化を達成しているのか。
「予算の一般会計の1%をシフトすればいいだけです。明石市の一般会計はだいたい1000億円で、その1%は10億円。毎年、10億円をシフトして、私が就任してから10年かけて100億円くらい増やし、もともと120億円だった子ども政策の予算を250億円にした。
税収が10億円落ち込んで、その額が子どもに回ると考えればいい。そうすれば予算を組めるに決まっているわけです。
家計にたとえれば、世帯年収600万円の夫婦が、その1%の6万円を、わが子の塾や習い事に捻出するイメージ。入学して塾に行き、次の年にピアノを習い出し……なんてことはどの家でもやっている。しかも子どもが2人いれば、倍かかる。でも、それくらいで家計は破綻しませんよね。
その代わり、お父ちゃんがボトルキープをブランデーから焼酎に変え、お母ちゃんが新しいコートをあきらめて、去年と同じものを着る、ということをやっている。
つまり『やれない』と思うのではなく、『やる』と決めてしまえばやるしかないんやから、剛腕でなくてもやれるんです。現に兵庫県では、10の自治体がやれているわけで、『明石のほかはムリ』という主張の反証となっている。
国なら紙幣も刷れるわけだからもっとできるはず。『ありません、ありません』って、いつまで言い訳してんねんと。金がないとあなたたちが言いすぎるから、国民も誤解するし、『こども保険』とか『こども国債』とか、新しい財源の話になる。でも、そんなことしなくてもできまんがなと」
もはや子ども政策は、理想ではなくリアリティだという空気感が広がってきているという。
「3年前までの全国市長会では、『子ども(政策)やっても儲からん』『高齢者に怒られるから選挙対策にならん』『福祉・市民サービス向上よりも産業振興』といった、高齢者や経済優先の声が大勢を占めました。
でも、明石市は子ども政策をやって、経済も回せることを証明した。結果、子ども食堂とか子どもの貧困対策など、子どものことについてやったほうがいいんじゃないか、という空気に、世の中が変わってきた。3年前までは子ども政策はやめようよと言っていた市長が、明石をまねて、18歳までの医療費無料化を始めた。しかも、子ども施策をメインに掲げて、選挙でも勝てているのが現実。もはや理想論ではないんです。
ひろゆきさんの言うように『子ども政策は無理』じゃなくて、それを打ち出さないと選挙に勝てなくなってきたし、世論も変わってきた。逆に、ひろゆきさんの認識はそこまで至っていないということ。明石周辺の5年前どまりです」
就任3年め以降、人口増、税収増を達成している明石市。奇をてらったことをやっているわけではなく、泉市長が貫いているのは「どこでもできる政策」。すなわち、本来なされるべき当たり前の施策であり、誰が市長になってもできるということだ。
「今だけよければいい、明石だけよければいい、というんだったら、ほんまはもっと大きなことができるけど、それは私のプライドが許さない。私は、自分が市長でなくてもできることをやりたい。つまり、持続可能な予算決めをしっかりやっています。子ども政策についても安定的な制度にするために、条例化していっています。
国なんて規模が大きいからすぐにできる。いまは政治主導で、首相は省庁の人事権を握っていて、省庁に対し命令できる立場になっている。つまり予算にタッチできるということ。
たとえば国土交通省のムダ遣いを半分に減らすだけで、子ども政策の予算は簡単に倍増できる。とにかく、総理が腹をくくりさえすれば、予算シフトができる時代になったんです。
もし私が総理なら、3年でやれる。3年で日本を立て直せますよ」
トップの決断で予算をシフトすれば、よりよい子ども施策は実現できる。少子化に加え、コロナで弱体化した日本を、総理には早く蘇らせてほしいものだ。
( SmartFLASH )