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ウクライナ現地編集者が語る新型コロナレポート「ロシア軍の砲撃の最中もワクチン接種を継続した」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.05.19 06:00 最終更新日:2022.05.19 06:00

ウクライナ現地編集者が語る新型コロナレポート「ロシア軍の砲撃の最中もワクチン接種を継続した」

取材に答えてくれた、ウクライナ国営通信日本語版編集者・平野高志氏

 

ウクライナでは1日平均512人の新規感染者が報告されている。ピークだった2月10日の1%になる。》

 

 2月24日のロシアによる侵攻開始から約80日。ウクライナ保健省の発表をもとにした統計データは、同国の新型コロナウイルス感染者数が激減していることを示している(ロイターCOVID-19 Global tracker5月13日)。だが、これは正確な数字ではない。

 

 

ロシア軍の攻撃によってウイルスの継続的な調査は望めず、感染者数や、どういう株が拡がっているのかなどの流行状況が把握できなくなっているからだ。

 

 WHOや「国境なき医師団」も把握できていないというウクライナの新型コロナの流行や感染対策の状況について、ウクライナ国営通信「ウクルインフォルム通信」日本語版編集者の平野高志氏に聞いた。

 

「現在、ウクライナのニュース報道は99%が戦争関連で、2月24日以降、新型コロナの報道は皆無です。ウクライナ保健省も開戦以降、感染者数やワクチン接種済み件数の発表をおこなっていない状況です」

 

ーー新型コロナの医療活動はストップしているのでしょうか。

 

「砲撃を受けている自治体でも、病院に直接の被害がなければ医療活動は今もおこなわれています。

 

 たとえば北部の都市であるチェルニヒウでは、開戦当時はロシア軍の砲撃によって死者も出ていましたが、医療機関はその最中にもワクチン接種をおこなっていました」

 

ーー国民の新型コロナの対策状況を教えてください。

 

「もともとマスクを着けている人は少なくなっていたのですが、現在ではほとんど見かけません。スーパーマーケットや地下鉄などでは着用義務があるのですが、現在は実感として、守っている人は10%もいない状態です」

 

ーー避難所は、換気が不十分で“密”になるという指摘があります。

 

「キーウなどでは、シェルターに避難する必要があるのは、空襲警報が鳴っているときなどに限られ、長い時間ではありません。

 

 ウクライナ第2の都市である北東部のハルキウや東部のドンバス地方などは、長時間シェルターに避難している人が多くいますが、マスクを着けている人はいないと思います。ただ、地下鉄の構内など広い空間をシェルターとして利用している場合は、肩を寄せ合うような状況ではありません」

 

ーー新型コロナの感染状況はどうでしょうか。

 

「私は医療や公衆衛生の専門家ではなく、あくまで実感に基づくものですが、現在では私の周囲で、感染したという人の話を聞くことはほぼありません。

 

 感染がピークだったとされる2月には、まわりに感染者が出ている状況でしたから、現時点では、感染はそこまで拡大していないのかなと思います」

 

ひらのたかし
1981年生まれ 東京外国語大学ロシア・東欧課程卒。2008年よりウクライナ在住。在ウクライナ日本国大使館専門調査員を経て現職。近著『ウクライナ・ファンブック』(パブリブ)が現在4刷と、話題になっている

 

( 週刊FLASH 2022年5月31日号 )

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