■日本人の生活は1970年代後半のレベルに落ちた
「かつて日本は輸出主導経済だったから、円安はメリットが大きかったのですが、今は消費主導経済となり、海外からモノを買う国になった。
したがって、通貨安はデメリットしかありません。
経済構造が変わった結果、円安は国民の生活水準を下げるでしょう。原油など、資源価格高騰と円安がダブルパンチとなる。しかも給料が上がらないまま、出費だけが増える。景気がよくならずに物価だけが上がる、スタグフレーションに入ったといえると思います」
多くの中小企業にとって、円安は業績の押し下げ要因だ。
「円安が進めば、原材料の輸入価格が上がってコスト増になる。コストが上がったぶんを製品価格に転嫁できる競争力のある企業は別として、それができない中小企業は利益が減り、株価も下がります」(同前)
価格転嫁以外に、企業がコストの増加分を吸収する方法は2つだ。
「従業員の賃金を下げるか、下請けなど取引先の価格を値引きさせるか。いずれも従業員の生活水準や取引先の業績を悪化させ、日本経済に負の循環をもたらす。今の日本にとって円安はデメリットばかりで、メリットはほとんどないと思います」(同前)
「日本=豊かな国」の認識を変える必要があるという。
「今の日本人の生活は、1970年代後半ぐらいのレベルに落ちています。当時は1ドル=360円から240円という時代でした。
物価が上がっても給料が上がればいいんですが、仮に上がったとしても物価上昇よりも遅くなることが多い。
今、年金の減額が始まっているので、高齢者の生活は本当に大変なことになる。日本はこれから非常事態に入っていくという感覚で備えておかないと、人生100年時代を生き残れないかもしれません」(同前)